パレイドリア
椅子に座る。
なんとなくドアのほうを見たら、
鍵がアヒルの顔をしていた。
写真に収めようかと思って、ふと手が止まった。
これだけ広いネットのどこかに、
同じことを言っている人間が、
もう居るんじゃないか。
気になってAIに聞いてみたら、
案の定、Xで上げている人が居たらしい。
残念だな、と思って諦めた。
何を残念がっているのかは、
自分でもよく分からない。
こういう、
模様や物の配置が顔や動物に見える現象を
「パレイドリア」というそうだ。
そういえば須田景凪の曲に、
そんなタイトルのものがあった気がする。
俺は最近、散歩を始めた。
あるnoteユーザーに触発されたのだ。
その人は京都駅から大阪駅まで歩くような、
生粋の散歩ニスタで、
俺はただの一般人である。
二キロ歩くだけで一苦労だ。
続けるには理由が要る、と思った。
そこでビビッときた。
俺は、パレイドリアを探すために歩くのだ。
とはいえ「パレイドリアを探しています」では、
いまいち伝わらない。
だから #なんとなくそう見える展 という
タグをつけて、記録を残すことにした。
思い立ったが吉日。
サングラスをかけ、サンダルを履いて外に出る。
それから六十分、キョロキョロしながら歩いた。
完全に不審者である。
そして、思ったより見つからない。
こういうものは、
求めたときに限って出てきてくれないらしい。
パレイドリア探しは続けつつ、
最近すこし気になっているレコードショップを回ることにした。
現代に生きる我々は、
音楽を探すのがずいぶん簡単になった。
Spotify様々である。
ただ、あの「あなたへのおすすめ」は、
いい曲ではあるのだけれど、どれも似ている。
新鮮さがない。
あー好き、で終わってしまう。
TSUTAYAでCDを吟味していた、
若かりし俺を思い出す。
なんとなく心を惹かれるジャケットを
眺めながら、お小遣いと相談する。
この知らないアルバムに賭けるべきか、
BUMPやアジカンを無難に借りるべきか。
ちなみに、
そのとき賭けたのはPeople In The Boxの
『Citizen Soul』というアルバムだった。
「ニムロッド」という曲がかなりいいので、
よければ。
話が逸れたが、そんな当時を思い出して、
レコードというものに興味を持った。
ジャケットだけで選ぶあのヒヤヒヤ感。
え、このアーティストもレコード出してたんだ、
という気づき(あいみょんとか)。
いま俺はsyrup16gのレコードを探し回っている。
お持ちの方は一報いただけると幸いだ。
レコードショップ巡り+パレイドリア散策。
これが思ったより楽しい。
街をこんなにキョロキョロすることは、
まずない。
そしてパレイドリアは恥ずかしがりやなのか、
なかなか現れてくれない。
飲み物でも買おうかと自販機に向かった。
そのとき、目が合った。
そこに「鼻」があった。

すかさず撮影する。
お前……こんなところに。
そういう気持ちと、ささやかな満足感に浸った。
一応パレイドリアがメインではあるのだが、
「なんとなくそう見える」という
言葉の持つ範囲を考えると、
もう少し広げてもいい気がしている。
パレイドリアを見つけるのは、
想像以上に一苦労だ、という事情もある。
たとえば帰り道に、フクロウの置物があった。
壁からちょうど顔が半分だけ出ていて、
さながら「家政婦は見た」である。
ついでに写真に収めた。

これはパレイドリアとは言えないけれど、
こういうのも趣があっていい。
このまま、
日本一のパレイドリア収集家として生きようか、とも思った。
だが、俺は気まぐれである。
パレイドリアのように、
すぐ形を変え、気配を消す。
この趣味が続くかどうかは分からない。
ただ、
皆のパレイドリアも見てみたい気がするので、
もう少しだけ続けてみようと思う。
