生き方が変わると、世界が違って見える

海外で暮らした経験がある人と映画『かもめ食堂』の話をすると、たいてい「いい映画だけど、もう、以前のような素直な気持ちで観られないよねえ」と意見が一致する。
ちなみに『かもめ食堂』のあらすじはこんな感じ。
ヘルシンキの街角に、おにぎりをメインにした食堂を開店したサチエ。お客がまったく来ない平穏な日々を過ごすサチエだったが、ワケありの日本人女性ミドリとマサコと出会い、店の“改革”が始まる。
そして、私達が素直に観られないポイントはただ一点。
旅行者であるミドリとマサコのビザの問題が気になって落ち着かない!
外国人である二人がフィンランドで働くためには就労ビザが必要なはずで、たいていの国の場合、その条件は厳しい。
手続きも夢でうなされるくらい面倒くさい。イミグレーション(移民局)め……。
とりあえず、あの2人はサチエの所に泊めて貰っているお礼という大義名分で、無給で手伝っているのだとしても、今度はフィンランドの観光ビザの詳細が気になる。
2人とも何日分のビザで入国したんだろう……?
延長を申請したのかな……?
まったく、外国人として暮らしていく上で、ビザの問題というのは、トラウマ級にハードな経験なのだった。

海外暮らしを経て、それまでとまったく違う目で見えるようになった物語は他にもある。
『くまのパディントン』だ。
日本のテレビでアニメも放送されていたので、ご存知の方も多いだろう。
私も幼かったムスメとよく見ていた。
その頃の私は(浅はかにも)パディントンを単なるやんちゃなトラブルメーカーだと思っていた。
でも、今は違う。
あれは異文化の中で暮らす人なら誰にでも起こりうる、misunderstanding ゆえの出来事だ。むしろパディントンがとても生真面目で、彼の中の常識に従って行動しようとするがゆえに、(彼とは)異なる言葉やマナーや習慣を持つ社会(英国)と摩擦が起きてしまうのだ。
たとえばoysterである。
オイスターと言われて、パッと思いつくのは「牡蠣」ではないだろうか。
しかし、パディントンが暮らすロンドンにはオイスター・カードというSuicaのような交通系ICカードが存在する。はい、もう嫌な予感がしますね。
バスに乗ろうとしたパディントンは、バス・ドライバーにオイスター(カード)が必要だと言われ、市場に出向いて牡蠣を買う。真面目なクマである。
そして、真面目なパディントンは、ドライバーに言われたことに忠実に、そのオイスター(殻付き)をICカード読み取り機に……以下略。何が起きたかは、まあ、ご想像のとおりです。
そもそも、なんで交通系ICカードがオイスターなんて名前なのか……。(Suicaも西瓜だけども!)
その理由とされるものもまた、英国や英語圏の文化を知らない人には理解しづらいと思う。
私もパディントンのこのエピソードを読むまで、まったく知らなかった。

The world is your oyster.というフレーズが「世界はキミの思うまま」という意味で使われている→世界を思うままに移動できるカード→オイスター・カードらしい……。
嗚呼、パディントン。
キミの起こすトラブルのあれこれは、私にとっても他人事ではないよ。
それにしても、こういう文化的摩擦は、海外生活とか移民じゃなくても、日本国内だって、風習や文化の異なる土地や会社や学校へ足を踏み入れたら、日常的に起こりうるわけで。
かつての私はそれに無自覚だったなあと、海外生活を経た今、思うようになった。
世界は変わらないけれど、私が変わって、見え方が変わったというか。
これからも、少しずつでも世界の解像度が上がるような生き方をしていきたいものだ。
それはおそらく「変化を恐れない」という生き方じゃないかな。
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