金星で恋がはじまる夜
ふいに、胸の奥があたたかくなることがある。
誰かを思い浮かべたわけじゃないのに、
喉の奥が少しだけ熱を帯びて、
言葉にできない気持ちが、肌の内側にふわっと立ちのぼる。
あとから気づく。
あれは、きっと──
あなたのことを思ってた。
恋って、始まったときにはわからない。
音もなく、香りもなく、ただ静かに滲んでくる。
気づかないふりをしてるうちに、
からだが先に反応してしまっていた。
声を聞いた瞬間、
背中が少し伸びた。
名前を見かけたとき、
髪にそっと手をやっていた。
理性じゃなく、感覚が選んでる。
そのとき、わたしの中の“金星”が、
目を覚ましたのかもしれない。
金星は、ただの愛や美しさじゃない。
もっと奥にある、
“惹かれてしまう理由”そのもの。
好きになりたくてなったわけじゃないのに、
心よりも先に、
目がその人を探してる。
意識してないようで、
でも本当は、
すこしだけ綺麗でいたいと思ってる。
そんな自分に気づいたとき、
「もう恋してるんだな」って、やっとわかる。
あなたの前では、
声のトーンが半音だけやわらかくなる。
笑うタイミングが、ほんのすこし遅くなる。
それは、わたしの金星が、
わたしを“魅せよう”としてる証。
ただ素でいるだけじゃない、
でも、つくってるわけでもない。
からだからにじむ、
“この人の前では、ちゃんと感じていたい”っていう気持ち。
金星が恋を始めるとき、
何もかもが“ほんの少し”変わる。
手の動き、まばたきの速さ、
その人の話を聞いてるときの、うなずき方。
わたしの金星が、
ひっそりと、でも確かに光ってるのを感じる。
まだ何も始まってないのに。
まだ、あなたには何も言ってないのに。
でも、わたしの中では、もう恋だった。
身体が、先に知ってた。
金星が、もう選んでた。
――ほしのりりす
ことばだけで、濡れる夜がある。
あなたの“感じるところ”に、そっとふれていく連作です。
▶︎よるのショートエッセイ
わたしのことばが気になったら、
読んでみてください。
▶︎【はじめまして】星夜をかなでる、ほしのりりすです
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読み終えて、なにかが残ってしまったなら──
その余韻を、そっと返してもらえると、うれしいです。
わたしはまた、ひらいて書ける気がします。