火星がうずくとき
恋がはじまると、
すこし遅れて、
身体のどこかが、ふるえだす。
それはたぶん、“火星”の声。
理由なんていらない。
言葉にもならない。
ただ、あなたにふれたいと思った。
目が合ったとき、
呼吸のリズムがくずれる。
その瞬間、
わたしの中の火星が、うずく。
火星は、ただの衝動じゃない。
それは、わたしの中にある「生きてる証」みたいな熱。
理性ではおさえられない、
でも、ちゃんと理性が見ている場所。
「ふれたい」って、思ってしまったとき、
もうなにも起きてないのに、
身体の奥の感覚だけが、
静かに先を知っている。
あなたに近づくと、
すこしだけ声が低くなる。
言葉よりも目が語ってしまいそうで、
視線を逸らしてしまう。
でも、逸らしたあとの一瞬がいちばん熱い。
火星は、そこにいる。
金星が恋をはじめた夜、
わたしの火星は、
まだじっと見つめていた。
でも今はもう、
その火星が動きだそうとしている。
指先に、
背中に、
腰の奥に──
触れてないのに、
ふれてしまったみたいな感覚だけが残る。
恋が「気づいてほしい」だとしたら、
火星は「奪いにいきたい」。
でもわたしは、
まだその“欲しさ”に、名前をつけられないまま。
ただ、からだが、
うっすらと赤く染まっていくのを感じている。
この熱が、
わたしをどこへ連れていくのかは、まだ知らない。
でも、たしかに。
今夜、わたしの中の火星が、
そっと、うずいた。
――ほしのりりす
ことばだけで、濡れる夜がある。
あなたの“感じるところ”に、そっとふれていく連作です。
▶︎よるのショートエッセイ
わたしのことばが気になったら、
読んでみてください。
▶︎【はじめまして】星夜をかなでる、ほしのりりすです
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読み終えて、なにかが残ってしまったなら──
その余韻を、そっと返してもらえると、うれしいです。
わたしはまた、ひらいて書ける気がします。