見出し画像

グレープフルーツダメって、どこまでダメ?

「HONOさん、グレープフルーツがダメな薬って、結局どこまでダメなんですか?」

廊下で、管理栄養士さんに呼び止められた。

ジュース? 果肉? 皮は? 他の柑橘類は?

怒涛の質問攻撃をうけて、私は固まってしまった。
そして、いつも「ダメです」で答えてしまっていたな、と思った。

——これは、患者さんの食の楽しみを奪わない工夫を、管理栄養士さんと一緒に考えたくて書いた話。


ジュースだけじゃないんです

「ジュースだけですか? それとも果肉もダメ?」

たぶん多くの管理栄養士さんが、患者さんから一度は聞かれているんじゃないでしょうか。

答えは、どちらもダメ。

グレープフルーツに含まれている「フラノクマリン」という成分が、薬を分解する酵素の働きを止めてしまうからです。

ジュースでも、果実でも、ジャムでも、マーマレードでも、同じことが起きる。
しかも、コップ1杯(200mL)程度でも影響が出ると報告されている。

「コップ1杯くらいなら」が、通用しない。

私もこれを初めて知ったとき、
ちょっとびっくりしました。
「ジュースを薬と一緒に飲まなければいい」と思っていた時期もあったから。


いつまで避ければいい?

「じゃあ、薬を飲まないタイミングでグレープフルーツ食べるのは?」

これも、現場でよく聞かれる質問。

答えは、ダメ

グレープフルーツが酵素の働きを止めると、
その効果は3〜4日続くと言われています。

1日ずらしても、2日ずらしても、
まだ影響が残っている。

「時間をずらせば大丈夫」が、通用しないんです。

私もここを知ったとき、結構ショックだった。

学生時代に「相互作用には時間差で対応」と習った気がして、「あれ、グレフルは違うの?」と思った記憶があります。

普通の相互作用と違って、グレープフルーツは酵素そのものを壊してしまうから、酵素が新しく作り直されるまで影響が消えない。

だから、薬を飲んでいる期間は、避けてもらうのが一番安全。

患者さんに伝えるときは、
「お薬を飲んでいる間は控えてくださいね」が、
結局いちばんシンプルで間違いない。


柑橘系って全部だめなの?

「他の柑橘類はどうなんですか? みかんは? オレンジは?」

ここがいちばん管理栄養士さんが気にする部分だと思う。

「グレープフルーツはダメ」までは知っていても、
その先がモヤッとしている。
ダメダメばかり言ってないで、「これならいいですよ」と言ってあげたい。

同僚の管理栄養士さんからの質問をきっかけに、
自分でも頭を整理しようと思ったので、
信号機みたいに分けてみた。

赤信号。
患者さんが「ハッサク好きでよく食べてるんよ」と言ったら、ここで一度立ち止まりたい。


マーマレード、果皮の砂糖漬け、ゆず茶、柚子胡椒
——皮を使った加工品は要注意。


冬の定番、温州みかんが安心ゾーンにあるのは、
私的にはけっこう大きい。


この情報を薬剤師だけでなく管理栄養士さんも持ってたら、けっこう使えるんじゃないかなと思う。

私自身、書いていて
「あ、これ自分が欲しかったやつだ」と思った。


食の楽しみを奪わない代替案

ここまで読んでくれた管理栄養士さんなら、
もう気づいていると思います。

「グレフル全部ダメ」じゃない。
「柑橘類全部ダメ」でもない。

避けるべきものを避けて、
安心して食べられるものはちゃんと残っている。

私が患者さんへの説明で大事にしているのは、
ここ。

  • 「ハッサクは控えてくださいね、でも温州みかんはどうぞ」

  • 「マーマレードは避けて、いちごジャムにしませんか」

  • 「グレフルジュース好きだったんですよね、ネーブルオレンジのジュースなら大丈夫ですよ」

——こうやって、代わりを一緒に探せる薬剤師でいたいと思っています。

患者さんにとって、食べ物の話は薬の話より重いと思うんです。

「これも食べちゃダメ、あれも食べちゃダメ」が続くと、食べること自体が義務みたいになってしまう。特に高齢の方にとって、季節の果物は楽しみの一つだったりする。

その楽しみまで、薬を理由に奪いたくない。

個人差があることも、念のため触れておきたい。

たとえばアムロジピン(Ca拮抗薬)は比較的影響を受けにくいと言われているけれど、シンバスタチン(スタチン系)やタクロリムス(免疫抑制薬)は影響を受けやすい。

「この患者さんの薬は、グレフルとどれくらいシビアな関係か」を、薬剤師に一度確認してもらえると、もっと細かい代替案が出せると思うので、ぜひ薬剤師に聞いてみてほしいです。


食と薬の飲み合わせについては、薬剤師だけでなく、管理栄養士のみなさんとも考えたい話。

「HONOさん、これも大丈夫?」
と食事と薬について聞いてもらえることを、
私は本当に嬉しく思う。

患者さんの生活に、
一緒に関わっている気がするから。

これからも、
「これは赤、これは緑」と一緒に仕分けをしながら、季節の柑橘の話ができたら、いいなと思う。

▼ 関連記事
今回は食べる「中身」の話。こっちは、「どんな食べ方」の話。


このマガジンの他の記事もどうぞ


【コラム】ちょっとだけ詳しく:CYP3A4って何?

本編では「薬を分解する酵素」と書いたけれど、もう少し知りたい方のために。

名前は「CYP3A4(シップ・スリー・エー・フォー)」

薬を体内で分解する酵素のひとつで、
主に小腸と肝臓に存在しています。

「シトクロムP450」という大きな酵素ファミリーの一員で、
特に飲み薬の代謝に深く関わる働きをしている酵素。

薬物相互作用の話で「CYP」がよく出てくるのは、
この酵素のことです。

グレープフルーツとの関係

グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類は、
小腸のCYP3A4を不可逆的に止めてしまう。

「不可逆」というのが厄介で、酵素が一度止められると、
新しい酵素が作られるまで機能が戻らない。

その時間が、約3〜4日

だから「時間をずらせば」が通用しないんです

CYP3A4で代謝される代表的な薬

  • 降圧薬(Ca拮抗薬):フェロジピン、ニフェジピン(アムロジピンは比較的影響少)

  • コレステロール薬(スタチン系):シンバスタチン、アトルバスタチン(プラバスタチン・ロスバスタチンは影響少)

  • 免疫抑制薬:タクロリムス、シクロスポリン(移植後の患者さんは絶対に避ける)

  • 睡眠薬・抗不安薬:トリアゾラム(ハルシオン)など

  • 抗てんかん薬:カルバマゼピン

同じ系統の薬でも、影響の受けやすさが違うのがポイントです。

患者さんの薬を見て
「これCYP3A4で代謝されるやつかな?」と気になったら、
薬剤師に声をかけてください。

私たち、こういう質問を待っています。


参考文献

いいなと思ったら応援しよう!

ママ薬剤師HONO よろしければ応援お願いします!いただいたチップはオロナミンCの購入費としてモチベーションと活力アップに使わせていただきます✨