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「マグミット出てるね」で終わらせない。CKD患者さんの便秘薬を薬剤師が見直す理由

「マグミット出てるね」

病棟のカンファでこの一言が出たとき、
私は反射的にカルテをスクロールします。

『この人、eGFRいくつだっけ』
『Mg値、最後にいつ測った?』

酸化マグネシウムは、
いちばん身近で、
いちばん見過ごされやすい便秘薬。

特にCKDの患者さんでは、
「いつもの便秘薬」のままにしておくと、
ある日、静かに高Mg血症が起きていることがあります。

今日は、私が病棟で『マグミット』の文字を見たときに、頭の中で何を確認しているか──その思考ステップを言語化してみます。


▼ 前回記事はこちら
CKDの便秘は、薬・腎機能・腸内環境が複雑に絡み合っています。まだ読んでいない方はこちらからどうぞ。

CKD患者さんでは、水分制限、食物繊維不足、活動量低下、カリウム吸着薬や鉄剤など、便秘につながる要因がいくつも重なります。
そして、便秘薬の選び方にも注意が必要です。

さまざまな要因が重なって、便秘になりやすくなります。

その中でも、薬剤師が特に意識して見たい薬があります。

それは、
酸化マグネシウム(マグミット)です。

病棟でも薬局でも、本当によくみる薬だと思います。

  • 「安いから」

  • 「昔から飲んでいるから」

  • 「便秘薬として継続されているから」

そんなふうに、つい流してしまいそうになることもあります。

でも、CKD患者さんでは、
この“いつもの便秘薬”が、
薬剤師としての見直しポイントになることがあります。



■ 酸化マグネシウムは便利な薬

まず最初に書いておきたいのは、
酸化マグネシウムは決して悪い薬ではない、ということです。

昔から使われている便秘薬で、
刺激性下剤とは違い、
腸管内に水分を引き込んで便をやわらかくするタイプの薬です。

便を硬くしないように調整したいときや、
刺激性下剤を毎日使うことを避けたいときなど、
使いやすい場面が数多くあります。

患者さんにとっても、なじみのある薬かもしれません。

  • 「白い便秘薬」

  • 「マグミット」

  • 「酸化マグネシウム」

名前は違っても、長く飲んでいる方は多いです。

だからこそ、処方に入っていても違和感を持ちにくい薬でもあります。

でも、ここで一度立ち止まって考えてみたいんです。

  • その患者さんの腎機能はどうか。

  • 年齢はどうか。

  • 服用量はどうか。

  • どのくらいの期間飲んでいるのか。

  • Mg値は確認されているのか。

繰り返しですが、酸化マグネシウムは便利な薬です。
ただし、CKD患者さんでは
「いつもの便秘薬」として見過ごさないことが大切です。


 ■ CKD患者さんで注意したい高Mg血症

酸化マグネシウムで注意したい副作用のひとつが、
高マグネシウム血症です。

マグネシウムは主に腎臓から排泄されます。
そのため、腎機能が低下している患者さんでは、
マグネシウムが体の中にたまりやすくなります。

高マグネシウム血症では、悪心、嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、筋力低下、傾眠、意識障害などがみられることがあります。

高齢者では、自覚症状がないことも多い。

ただ、これらの症状は、
すぐに「酸化マグネシウムの影響かも」と結びつけにくいことがあります。

たとえば高齢の患者さんで、こんな事はありませんか?

  • 「なんとなく元気がない」

  • 「食欲が落ちている」

  • 「少しぼんやりしている」

  • 「血圧が低め」

こんな場面があったとき、
それを年齢や原疾患のせいだけにしてしまうと、
薬剤性の変化を見逃してしまうかもしれません。

回復期リハ病棟では、リハビリの疲れ、食事量の変化、睡眠状況、原疾患の影響など、患者さんの状態を左右する要素がたくさんあります。
だからこそ、「なんとなくいつもと違う」を薬の視点でも見直すことが大切だと感じています。

もちろん、酸化マグネシウムを飲んでいるすべての患者さんで問題が起こるわけではありません。
むしろ、起こらない人の方が多いかもしれません。

でも、CKD、高齢、脱水、長期使用、比較的多い用量、腸閉塞リスクなどが重なると、注意して見たい薬になります。

ただ、私の体感としては、症状が出て高マグネシウム血症の存在に気づく例は少なく、症状だけを頼りにしていると「気づいたときにはマグネシウム値が基準値を大幅に超えていた」なんてことも経験します。

『症状がないから安心』ではなく、
『この人は大丈夫かな?』という視点をもつことが大事だと思っています。

そして、薬剤師としては「便秘薬だから大丈夫」ではなく、
「この患者さんにとって、この便秘薬は安全に続けられるのか」

という視点も持ちたいところです。


 ■ 薬剤師が見たいのは、腎機能だけではない

酸化マグネシウムを見たとき、まず確認したいのは腎機能です。

  • eGFRはどのくらいか。

  • 血清Crはどう推移しているか。

  • Ccrで考える必要はあるか。

  • 高齢者や低筋肉量の患者さんで、Crだけでは腎機能をよく見積もりすぎていないか。

このあたりは、薬剤師が処方監査や病棟業務で意識したいポイントです。

▼ 「隠れ腎機能低下」の見抜き方についてはこちらで詳しく書いています。
低筋肉量の患者さんは、クレアチニンが正常でも、
本当に腎機能が正常とは限りません。


ただ、酸化マグネシウムを見るときに大切なのは、
腎機能だけではありません

  • 便秘の原因は何か。

  • カリウム吸着薬や鉄剤、リン吸着薬は入っていないか。

  • PPIやH2ブロッカーが併用されていないか。

  • 排便回数だけでなく、便性状はどうか。

  • 食事量や水分量はどうか。

  • 腹部膨満感や悪心はないか。

  • 退院後も同じ薬を続けられるのか。

便が出てる・出てないだけでなく、視野を広くみてみましょう。

回復期リハ病棟では、入院中にADLが変わり、
活動量も食事量も少しずつ変化します。

入院時は便秘が強くても、リハビリが進んで動けるようになると排便状況が変わることもあります。逆に、退院後に活動量や食事内容が変わり、入院中と同じ下剤量では合わなくなることもあります。

以前、80代のCKD患者さんがいました。
入院中はマグミット3gで快便だったのに、
退院後にご家族から
『水分を控えてるせいか、また出なくなって…』
と相談を受けたことがあります。

在宅では水分量も活動量も変わる。
便秘薬は"処方された瞬間に完成"ではなく、
生活の変化とセットで見直すものだと、改めて思いました。

こうした背景を見ていくと、酸化マグネシウムは単なる便秘薬ではなく、患者さん全体を見直すきっかけになります。

たとえば、便秘の原因がカリウム吸着薬や鉄剤にありそうなら、
下剤だけで対応するのではなく、処方全体を見直す視点が必要です。

食事量が少なく、水分も十分にとれていない患者さんでは、
便秘薬を増やす前に生活背景やケアの状況を確認したくなります。

そして、腎機能が悪い患者さんで酸化マグネシウムが長期に続いている場合には、Mg値の確認や、他の下剤への変更を検討することもあります。

ここに、薬剤師が関わる意味があると思っています。


■  代替薬を考える前に、便秘の背景を見る

酸化マグネシウムが気になると、
すぐに「では何に変えるか」という話になりがちです。

  • ラクツロース

  • PEG製剤

  • ルビプロストン

  • リナクロチド

  • エロビキシバット

  • 刺激性下剤

選択肢はいくつかあります。

ただ、どの薬が正解かは、患者さんによって変わります。

  • 便が硬いのか。

  • 排便回数が少ないのか。

  • 腹部膨満感が強いのか。

  • 食事量はどのくらいか。

  • 水分はとれているのか。

  • 腎機能はどの程度か。

  • 他の薬剤が便秘に関わっていないか。

  • 服薬回数が増えても続けられるのか。

こうした背景を見ずに薬だけを置き換えると、
うまくいかないこともあります。
特に、自宅に帰ってからの事を考えると、
複雑な用法になるのも避けたい。

更にCKD患者さんでは、
便秘の背景に薬剤や食事制限、
活動量低下が重なっていることが多い。

だからこそ、代替薬を考える前に、
「なぜこの患者さんは便秘になっているのか」
を整理することが重要だと感じています。

そのうえで、必要であれば医師に提案します。

たとえば、

「腎機能低下があり、酸化Mg継続による高Mg血症リスクが気になります。
便秘の背景にカリウム吸着薬や鉄剤も関与している可能性があります。
Mg値の確認、または他の下剤への変更をご検討いただけますか?」

単に「酸化Mgは避けた方がよいです」と伝えるよりも、
患者背景とセットで提案した方が、
臨床の中では受け入れられやすいと感じています。


■ 酸化Mgは悪者ではなく、見直しのサイン

酸化マグネシウムは、便利で使いやすい便秘薬です。
だからこそ、多くの患者さんに処方されています。

でも、CKD患者さんでは、その便利さの裏側に注意点があります。

  • 腎機能が低下していないか。

  • 高齢や低筋肉量で腎機能を過大評価していないか。

  • 長期に漫然と続いていないか。

  • Mg値は確認されているか。

  • 便秘の背景に、他の薬剤や食事制限が関わっていないか。

  • 退院後も無理なく続けられる処方なのか。

こうしたことを一つずつ確認することで、
酸化マグネシウムは「ただの便秘薬」ではなく、
患者さんの薬物療法全体を見直すサインになります。

薬剤師は、薬を止めるためだけに関わるわけではありません。
その薬が、その患者さんにとって今も安全に続けられるのか。
もっと合う選択肢はないのか。
退院後の生活まで考えて、無理のない処方になっているのか。

そこを考えることも、薬剤師の大事な役割だと思っています。

「マグミット出てるね」で終わらせない。
CKD患者さんの便秘薬を見るとき、そんな視点持ってみませんか?

みなさんの病棟では、
CKD患者さんの便秘にどう向き合っていますか?

『うちはこういう代替薬を使っている』
『この提案方法が医師に刺さった』
など、
ぜひコメントで教えてください。

一緒に現場のリアルを持ち寄れたら嬉しいです。

次回は、CKD患者さんの便秘に関わりやすいカリウム吸着薬・鉄剤・リン吸着薬について、もう少し整理してみたいと思います。

このシリーズの記事をまとめて読む
CKD患者さんの薬物療法を、現場の視点で整理しています。


🔗 CKD×便秘の「考える順番」を整える便秘シリーズ

ステップ1:そもそも「便秘だから下剤」でいいの?

ステップ2:マグミットを出す前に確認すべき3つのこと

ステップ3:腸腎連関の全体像を知る

ステップ4:腸に良い食事の落とし穴


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