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眠れない夜に、天井と話す|「眠れない」は失敗じゃない


こんにちは、ゆきのです。


布団に入って、目を閉じて、しばらく経って──
また目を開けてしまった。


そんな夜が、ありませんか。
 


時計を見ると午前2時。

見なければよかったと思いながら、もう一度目を閉じる。


まぶたの裏側で、昼間のことが順番を無視して再生される。

上司の語尾。

返せなかったメッセージ。

誰かの表情。


どれも今すぐどうにかできるものではないのに、頭はそれを手放してくれない。


隣の部屋の冷蔵庫が低く唸っていて、その音さえ妙に大きく聞こえる。

寝返りを打って、枕の位置を少し直して。

それでも、体の置き場所が決まらない感じが残る。


眠れない夜のいちばんの重さは、眠れないことそのものより。
そのあとに続く、心の声かもしれません。
「眠れない自分はおかしいのではないか」
──そんな声。


まるで暗闇の中で、誰かがそっと決めつけるような──
「普通の人はもう眠っている」と。


でもその声は、本当に事実を伝えているのでしょうか。


今夜は、その声について少しだけ話をさせてください。

ここでは、うまく眠れない夜も「そのまま」で置いていけます。
 


霧の夜は、視界が狭くてもいい


冬の夜は底冷えがします。
布団の中なのに、空気だけが冷たい。

窓の外にはときどき霧がかかっていて、街灯の光がにじんで輪郭をなくしている。
向かいのマンションの灯りも、いつもより遠く見える。

眠れない夜の頭の中は、あの霧に似ていると思うことがあります。
考えごとの一つひとつは、近づけばちゃんと形がある。

霧の中にいると、全部がつながって見えます。
不安と疲れの境目が、わからなくなる。

小さな心配と大きな恐れが同じ濃さで漂っていて、どれから手をつければいいのか見当もつかない。


以前の私は、その霧を晴らそうとしていました。

原因を突き止めよう。
眠れないなら、せめて有意義に使おう、と。

スマホで「眠れない 原因」と検索して、ブルーライトを浴びながら眠る方法を探すような、矛盾したことをしていた夜もあります。

でも霧は、力んで振り払えるものではなかった。
むしろ腕を振り回すほど、自分の位置さえ見失いました。
 


あるとき──
たぶん、何度目かの眠れない夜でした。

解決策を探すことにも疲れて、ただ天井を見上げていたとき。
気がついたら、声に出していました。


「……眠れないね」
 


誰に言ったわけでもない。
天井に向かって、ただそれだけ。


でも口にした瞬間、頭の中でぐるぐると回っていた言葉が、ほんの少しだけ遠くなった気がしました。


考えていることを声にすると、それは「自分の中」から「自分の外」へ出ていく。

胸の内側で渦巻いていたものが、天井と自分のあいだの空気の中に置かれる。

それだけのことで、ほんのわずか、息がしやすくなった。

霧を晴らすのではなく、霧の中に立ったまま、足元だけを確かめる。

あの夜、私が覚えたのはそういう感覚でした。
 


暗闇の中で目を開けている、ということ


けれど、霧が薄くなって朝が来ると、また別の声が始まります。

眠れない夜を過ごすと、翌朝、自分を責めたくなります。

「また眠れなかった」

「明日に差し支える」

「なぜ、こんなふうに眠れないのか」

洗面台の鏡に映る自分の顔のくすみが、その声をさらに大きくする。


でも、少しだけ思い出してみてほしいのです。

あの暗闇の中で目を開けていたこと。
それがどんな意味を持つかは、あなただけが知っていると思います。

耐えていた夜かもしれない。

ただ、どうしても眠れなかった夜かもしれない。

何であっても、その夜はあなたのものです。
──そう思えなくても、構いません。
理由なんてなくていい。
勇気と呼んでもいいし、ただ「やり過ごしていた」と呼んでもいい。

以前の私は、「眠れない夜=失敗した夜」だと思っていました。


今は、少しだけ違います。

あれは、心が処理しきれなかったものを抱えたまま、それでも朝を待っていた夜だったのかもしれない。

うまくできなかった夜ではなく、それでもやり過ごした夜だったのだと、今はそう思えています。
 


もし今夜も眠れなかったら、無理に目を閉じなくてもいいのかもしれません。


天井を見ながら、一度だけ息を吐いてみてもいい。

吸うより先に、ただ吐くだけ。


できなければ、それでも構いません。

肩の力がほんの少し抜けたら、そのまま布団の重さに体を預けてみる。

掛け布団のぬくもりが、どこかに触れているのを感じられたら、それだけでいい。

重いな、温かいな、あるいは、ただそこにあるな、と。


感じにくければ、息だけでもいい。
頬に当たる空気。
鼻先を通る、かすかな温度。

温もりも、息の感覚も、見つからない夜があります。

それでも、ほんの一瞬だけ意識を向けてみたこと──
それが、あなたの心を守る小さな灯りになることもあるのかもしれません。


「眠ろう」ではなく、「横になっている」それだけを、自分に許してみる。
 


もちろん、それもできない夜があっていい。
何もしなかった夜も、何も感じられなかった夜も、ちゃんとあなたの夜です。
  


霧はいつか薄くなる


でも、明ける前の時間を「無駄だった」と呼ばなくていい。

冬の夜明けは、まだ少し遅い。
それでも、霧の向こうの光は、一番寒かった頃よりほんの少しだけ柔らかくなっている気がします。

あの暗さの中で目を開けていたこと。
それに名前をつけなくても、いいのだと思います。

ただ、暗闇の中で目を開けていた夜があった。
それだけで。

私もまだ、ときどき天井と話す夜があります。

でも、その夜を「失敗」と呼ばなくなったことが、私の小さな変化です。


咲かなくても、眠れなくても、あなたは美しい。

またここで、お会いできたら。


ゆきの



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□ 眠れない夜に聞こえてくる「決めつける声」と、少し距離を取る
[ 思考は雲、あなたは空 ]

□ 頭の中が騒がしいときは、身体の感覚に意識を向けてみる
[ 身体という、最初の安全基地 ]

□ 深夜に再生される記憶や後悔を「今」に戻す
[ 過去という部屋の鍵を、そっと置く ]

□ 「また眠れなかった」を“振り出し”にしないための見方
[ 回復は、螺旋階段のように ]


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