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期待と自分の願いがずれる夜に|重なるところで、春が来る

三月の終わりごろ、道が少しだけ明るくなる。
気のせいかと思うほど、ほんのわずか。

でもたしかに、空気の色が変わっている。


誰かに期待されることが、温かく感じられる日もある。

見てもらえているようで、背すじが少し伸びることもある。


けれど、その温かさが重くなる夜がある。


期待されている自分と、自分が向かいたい方角が、
どこかですれ違っていると気づいたとき。

胸のあたりが少しだけ重く感じる。
 


道には、交差点がある。

ひとつの向きだけではなく、いくつもの道が集まって、
またそれぞれに分かれていく場所。


誰かの願いと、自分の願いも、
そういう交差点に似ているのかもしれない。


ぴたりと重なる日もあれば、少しずれている日もある。

まだ同じ方角を向けない日も、きっとある。


ずれているからといって、
すぐにどちらかが間違っているとは言えない気がする。


誰かの願いに、自分の願いをそっと重ねようとして、
うまく重ならない夜もある。


どちらかを小さくしてしまえば楽になるようで、
胸の奥がかえって冷えていくこともある。


でも、自分の願いを消すことと、誰かに応えることは、
もしかしたら別のことなのかもしれない。


重なる場所を見つけるには、時間がかかる。

地図もなく、急いでもうまくいかないことが多い。


だからその夜は、すぐに決めようとしないことも
ひとつの選び方なのかもしれない。


交差点で信号を待つみたいに、足を止める時間がある夜もある。


それでも道は、少しずつ明るくなっていく。

気のせいかと思うほど、ほんのわずかに。


でも、たしかに。


もし今夜、立ち止まりたくなったなら。


自分がどちらの方角を向きたいのか、まだ決めなくていいから。


ただ、少し息がしやすい方角があるかどうかを、感じてみるだけでも。


ゆきの



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