紅月導く百鬼夜行 3話

翌朝、2人は朱雀山に向けて再び歩き出した。朱雀山まではまだまだ距離があり、時折休憩を挟みつつ2人は歩いていた。

「そういえば伊織さま、旅のお金とかって大丈夫なんですか?」
「ああ、それは大丈夫」

そういうと伊織は、懐から巻物を取り出した。

「それは?」
「運営が出してる、悪い妖怪の討伐依頼の巻物。これに載ってる指名手配の妖怪を倒して連絡すれば、運営からお金が貰えるんだ」
「へー、ほんと手厚いですねえ」
「うん、僕も割とやってるけど…もう少し余裕は欲しいかな」
「じゃあ行きますか!お金稼ぎ!」
「頑張ろうか」

2人が巻物を見て獲物を見ていると、そこには姑獲鳥の討伐依頼があり、報酬の金額も相応に良いものだった。

「姑獲鳥…子供を攫う妖怪だね。どうも人里でも被害が出てるみたいだ」
「あれ?この目撃証言って、この先にある叢雲の里じゃないですか?行ってみましょうよ!もしかしたら何か倒すための手がかりがあるかも!」
「じゃあ行ってみようか」

2人が少し歩くと、すぐに叢雲の里に辿りついた。そのまま2人は姑獲鳥の目撃者である親子に話を聞くことにした。

「ええそうなのよ、この間この子におつかいに行かせたんだけどねぇ、そしたら知らない女がこの子を誘拐しようとしたのよ!」
「それが姑獲鳥だったんですか?」
「うん、綺麗な人でね、ちょっとこっちにおいでって言われたけど、知らない人だったからおれ、断ったんだ。そしたら無理やりにでも連れてくって、こう…腕がでかい羽に変わったんだ!」
「よく逃げられましたね…」
「うん、真っ昼間だったし、それに八百屋のおっちゃんたちがみんなで追っ払ってくれたから何とか助かったけど…怖かったよ。あいつ、飛んで逃げる時にまた来るって言ったんだ…お願い!助けて!」

少年は今にも泣きそうな顔で伊織に縋ってきた。いくら助かったとはいえ、いつまた姑獲鳥が来るか分からない恐怖と戦っているのだ。無理もない。

「わかった、僕たちに任せて」
「私もお手伝いしますからね!」

そうして伊織たちは、親子の厚意で貸してもらった宿の一室で、姑獲鳥襲来に対して対策を練ることにした。

「白昼堂々と誘拐しにきたってことは、よほど自分の実力に自信があるんだろうね」
「そうですかね、人間さんに反撃されて逃げたってことは、そんなに強くないんじゃ
?」
「いや、そうは思わないな。きっといつでも連れ去れるという余裕があるからこそ一旦退いたと考えるのが自然だ。じゃないと報酬がこんなに高いわけないからね」
「確かに…でもどうしてあの男の子を狙ったんでしょう?今日見て回った感じ、叢雲の里には他にも子供はいたと思うんですけどね…」
「それは分からないな、偶然見つけただけかもしれないし、前々から目をつけてたのかもしれない。まぁそれは考えなくてもいいと思うな。」
「そうですか…じゃあ伊織さま、姑獲鳥はどうやって倒しましょうか?いくら追い詰めても飛ばれたらこっちに勝ち目はないですよ?」
「そんなの簡単でしょ」
「というと?」
「一撃で沈める」
「至極単純!!」

(もしかして伊織さまって意外と脳筋なのか…?)

「まぁそれが一番いいけど、もし避けられた時の場合も考えないとね。基本は羽を潰して飛べないようにするんだけど、他の案ある?」
「えぇ!?うーん、あ、確か鳥は足があまり発達してないって聞いたことあります!もし現れたら真っ先に足を狙えばいいのでは!」
「なるほど足か…足を狙えば人間に変化もできないだろうしいいかもね。まあでも結局は一撃必殺になるのかなぁ」
「そうですね…」

2人が話していた、その時だった。

「誰か!助けて!」
「「!!」」
「伊織さま、」
「行くよ」

昼間の少年の悲鳴が聞こえ、2人は窓から身を乗り出した。すると、そこには大きい足で少年を掴み、今にも攫わんとする姑獲鳥の姿があったのだった。

「大丈夫よぼうや、あたしが、お前を守ってあげるからね…さぁ、母と一緒においで?」
「どの口が」
「!!」

伊織が勢いよく金棒を振るうが、姑獲鳥はそれを間一髪で避ける。だがその一瞬に、姑獲鳥は足から少年を離した。

「お駒、その子を連れて遠くへ」
「はい!」
「ああ、どうして邪魔をするの…悲しい、憎い…お前を倒して、ぼうやをあたしの子に…!」
「そんなに子供が欲しいなら子泣き爺でも抱いてなよ、毒婦が」

両者は睨み合う。今、緊張感が叢雲の里に走る。伊織は、姑獲鳥を倒すことが出来るのか。

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