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【カネ⑤】スクラップが機能しない?行政の抱えるジレンマ

ここまでの4回で行政の財政状況を砂川市を例にみてきました。
ここから行政が抱える共通の課題をみていきましょう。

「スクラップ・アンド・ビルド(不要なものを壊し、新しいものを作る)」は、民間経営では当たり前の感覚ですが、行政では、「ビルド(作る)」ばかりが進み、「スクラップ(やめる)」が驚くほど機能しません。

なぜ行政において「スクラップ」が機能不全に陥るのか、私が思う4つの構造的な理由にまとめました。


1. 「90%の固定費」というサンクコストの罠

以前お話しした、経常収支比率(約90%)が最大の壁です。

  • 理由: 行政の支出のほとんどは、法律で決まった福祉手当、職員の給与、過去の借金返済です。ここを削ろうとすると市民や職員の負担増になりますので、なかなか削りずらいのが実情です。

  • 実態: いざ「スクラップしよう」としても、削れるのは残りの10%(自由な政策経費)の中のごく一部。

  • 解像度アップ: 50万円の月収のうち、45万円が家賃・ローン・保険で消えている家庭で、「食費を1,000円削る(スクラップ)」努力をしても、新しい部屋を増築する(ビルド)ための数千万円は到底捻出できません。結果として、「削る苦労のわりに、新しいことをする資金が生まれない」ため、スクラップのモチベーションが湧きにくいのが現状です。


2. 「受益者」という名の最強の反対勢力

民間のサービスは「売れなければ廃止」ですが、行政のサービスは「利用者が一人でもいれば、廃止に反対の声が上がる」という特徴があります。

  • 理由: 予算を削る(スクラップ)ことは、特定の市民にとっての「既得権益」を奪うことと同義です。

  • 実態: 例えば、利用者が少ない公共施設を閉鎖しようとすると、熱心な利用者が必ず反対します。

  • 解像度アップ: 全市民から見れば「年間100万円の赤字を垂れ流す施設」でも、その施設を使う10人にとっては「人生のすべて」かもしれません。政治家(市長や議員)にとって、この10人の猛烈な反対を押し切るコストは、100万円を節約するメリットを上回ってしまうのです。声の大きい人が優先される事態は皆さんも思い当たることがあるのではないでしょうか。もちろんこれらも行政の役割の一つであることは間違いないので、これという正解はないと思います。


3. 地方交付税の「逆インセンティブ」構造

これも「行政特有」で厄介な理由です。

  • 理由: 前に解説した通り、効率化して支出を減らすと、国からの「仕送り(地方交付税)」が翌年以降に減らされる可能性があります。

  • 実態: 「頑張ってスクラップして貯金を作っても、国に回収される」という思いがあるため、自治体側には「予算を使い切った方が得」というバイアスが働きます。

  • 解像度アップ: 「無駄を削っても、結局財布の中身が変わらないなら、わざわざ痛みを伴うスクラップをしなくてもいいか」という空気が、組織全体に蔓延しやすくなります。そもそも、インセンティブという言葉が出てくるうちは改善しないのではないかと思います。


4. 「ビルド」が「スクラップ」を加速させない皮肉

砂川市の令和7年度予算のように、巨大な「ビルド(学校建設)」が起きる時、本来は古い学校を「スクラップ」して維持費を下げるはずです。

  • 理由: 新しい施設を作ると、そこには最新の設備(冷暖房、IT機器など)が入り、結果として維持管理費(ランニングコスト)は以前より高くなることがよくあります。

  • 実態: 「古いから壊す」はずが、「新しいから管理にお金がかかる」という皮肉な結果を招きます。

  • 解像度アップ: 砂川市の歳出分析で見えた通り、投資的経費(ビルド)が膨らむと、数年後には必ず「維持管理費」という形で固定費を押し上げます。つまり、今のビルドが、未来のスクラップをより困難にしている可能性があるということです。



さて、今回は行政の事業の性質と、それによって行政が抱える課題を考えてみました。真に財政支出すべきものは何か。時代は変化していくので、本来はそれに合わせて行政も柔軟に反応しなければならないはずですが、過去の借金や経常費の増加によって余裕がありません。所謂、財政硬直化という状態になっているのが、北海道のほとんどの自治体で起きてしまっています。

次回はここまで確認してきたことからより具体的に深ぼっていきましょう。

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