【カネ④】『頑張って稼ぐと減らされる?』地方交付税のルール
みなさんこんにちは、今日も地方の財政について砂川市を例にみていきましょう。今回は地方交付税についてです。
「地方交付税」を理解することは、地方自治の最大のジレンマを理解することに繋がります。
わかりやすく「仕送り」に例えて解説します。
1. 地方交付税とは何か?
「日本中どこに住んでいても、同じレベルの行政サービスを受けられるように、国が税金を再配分する仕組み」です。
本来、税金は「稼いでいる街(東京など)」に集まります。しかし、それでは地方の街は消防もゴミ処理もできなくなってしまいます。そこで、国が一旦まとめて集めた税金を、「足りない自治体に、足りない分だけ配分する」のがこの制度の正体です。しかし、税収増を促すため、格差の全てを穴埋めするためのものではありません。
2. 交付税が決まる仕組み
地方交付税の額は、以下の算定式で決まります。
地方交付税 = ①基準財政需要額 - ②基準財政収入額
① 基準財政需要額(これくらい必要だよね、という見積もり) 人口や面積、道路の長さなどから、国が「この規模の街なら、普通これくらいの運営費がかかるはずだ」と計算した、いわば「標準的な生活費」です。
② 基準財政収入額(これくらい稼げるよね、という見積もり) 市税などのうち、国が「これくらいは自分で稼げるでしょ」と計算した「自力で稼げるお小遣い」です。
この差額(足りない分)が、地方交付税として支給されます。
3. 2つの種類の地方交付税
砂川市などの予算書に出てくる「地方交付税」は、実は2層構造になっています。
普通交付税(全体の94%) 上記の計算式で決まる「定額の仕送り」です。
特別交付税(全体の6%) 計算式では測れない「特別な事情」に対して配分されます。
例:大雪が降って除雪費が足りない、災害が起きた、特別なイベントがある、など。
砂川市にとっての重要性: 豪雪地帯の砂川や旭川では、この「特別交付税」が冬の生活を支える命綱になります。
4. 地方交付税は曲者?「3つのポイント」
ここからが交付税の曲者たる「核心」部分です。
① 「頑張って稼ぐと減らされる」ジレンマ(逆インセンティブ)
市が努力して企業を誘致し、市税(自前の収入)が増えると、上記の計算式の「②基準財政収入額」が増えます。すると、翌年の「地方交付税(仕送り)」がその分減らされてしまうのです。具体的には約75%と言われています。
つまり、1万円収入が増えても、翌年に手元に残るのは2500円ということになります。 「頑張ってバイト代を増やしたら、親からの仕送りをその分減らされた。」当たり前と言えばそれまでですが、こういった構造が自治体にもあるということです。
一方、本来であれば基礎的な実力以上の事業を行なっているという見方もできます。つまり無駄遣いしていないのか?と問われれば、なんとも苦い顔をするしかないはずです。次回はこの辺りのジレンマについてお話ししましょう。
市長の公約をはじめとした新規事業は裁量のあるお金で行わなければなりませんが、前回説明した通り、裁量のあるお金の大半は借金の返済や民生費に使用されています。
経常収支比率が高い自治体で、新規事業を行うためにはやはり税収を増やすことが重要ですが、地方交付税の制度上、10億円の事業を行おうと思ったら、税収が40億増えないと10億円のお金は手元に残らないということです。それだけ税収が伸びる見込みがあるでしょうか。
② 「国が使い道を指定しない」自由と怖さ
「補助金」は使い道が決まっていますが、「地方交付税」は使い道が自由(一般財源)です。
しかし、実態は「国が計算した標準的なサービス(①)」に充てることが前提なので、通常は住民サービスの維持に使用されます。砂川市のように「巨大な学校建設」などの市独自の裁量事業には使用できないのが一般的な考えです。
③ 「不交付団体」とは
自力で稼ぐ力が強すぎて、仕送りがゼロでもやっていける自治体を「不交付団体」と呼びます(例:東京都、愛知県飛島村など)。北海道においては、泊村のみです。理由はなんとなく想像ができますよね。ちなみに札幌市でも地方交付税は重要な歳入源です。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000826808.pdf
砂川市は、収入の約20%をこの仕送りに頼っているため、国のルール変更一つで街の予算がガタガタになるというリスクを常に抱えています。
令和7年度に関しては特殊で市債が歳入の大半を占めていますが、この割合が減ると歳入のトップになるのは地方交付税です。
以上が地方交付税と呼ばれるお金の性質です。
多くの自治体がこの財源に助けられている一方、悩まされてもいるのではないかと思います。よく首長が中央省庁に要望活動をしに行くときに何をしているかというと、こういった裁量のある予算の拡充や算定方法の改善をお願いしに行ってる場合が多いです。
次回はこれらの予算の状況から地方自治体が抱えるジレンマについて
考えていきましょう。
