冬眠前のクマが漢方薬局に迷い込んで「熊の胆」を発見。その顛末は?
タイトル: < 高価すぎる熊の胆 > (寓話的ショートショート)
山ではどんぐりも椎の実も少ししか実らず、冬眠前のクマたちは空腹に突き動かされて人里へ下りるようになった。人間との遭遇が相次ぎ、町はすっかり恐怖に包まれていた。
そんなある日、一頭のクマがふらりと漢方薬局に迷い込んだ。
店主は悲鳴を上げて逃げ出し、店内にはクマだけが残された。
クマは棚に並ぶ瓶を見て目を丸くした。
「山の恵みが、こんなにきれいに並んでいるとは」
ドングリ、山ブドウ、薬草……見覚えのあるものばかりだ。クマは蓋を
器用に開け、次々と中身を味わった。山よりも豊作で、しかも美味い。
満腹になり、ふと奥の棚に目を向けると、ひときわ いかめしい瓶が
鎮座していた。
ラベルには『熊の胆(い)』と書かれている。
その横には、丁寧な解説書きが添えられていた。
『熊の胆は、クマの胆嚢を乾燥させた生薬。古来より
「万能薬」として珍重され、一塊あたり数十万円で取引される』
クマは読み終えると、しばらく石のように固まった。
そして、おそるおそる自分の腹に手を当てた。
「……それ、俺の中にも入ってるやつだよな」
次の瞬間、クマは弾かれたように店を飛び出した。
必死で走りながら、何度も腹を押さえた。
「一つ数十万円なんて、俺の体は人間という危険動物に
どれだけ狙われてるんだ……!」
山に戻ると、仲間たちが心配そうに集まってきた。
クマは息を切らしながら叫んだ。
「町には、俺たちの中身をバラ売りしてる店がある!
しかも、とんでもない高値でだ!」
その噂は瞬く間に山中に広まり、恐ろしい尾ひれがついていった。
「町に行くと、生きたまま中身を抜かれるらしい」
「高価な臓器ほど、真っ先に狙われるらしい」
「脂が乗っているやつは、特に危ないらしい」
それ以来、クマたちは決して町へ近づかなくなった。
町は平穏を取り戻し、山には静けさが戻った。
ー 終り ー ご高覧ありがとうございました。(^^♪
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