ある大学で教授職の公募が出た。選考の顛末は?
タイトル: < 教授選 >
山岸准教授は、学界で着実に地歩を固めてきた研究者だった。
専門は比較文学。英語で執筆した論文は欧米の主要な学会誌に掲載され、海外の大学からの招聘講演も絶えない。だが、彼は母校である正徳大学に強い愛着を抱いていた。そこは恩師が教鞭を執り、自らも学問の門を叩いた聖地だった。
ある日、その正徳大学で教授職の公募が出た。
「これこそ、わが研究の集大成を捧げるべき場所だ」
不退転の決意で、山岸は応募書類を整えた。
審査当日。
古色蒼然とした会議室に、正徳大学の教授陣が居並ぶ。その前で、山岸は模擬講義を行った。
テーマは「言語の境界と沈黙の詩学」。
英語と日本語を自在に行き来しながら、詩と哲学を織り交ぜて語る彼の言葉は、知性と情熱に満ちていた。会場は水を打ったように静まり返り、審査員たちはその圧倒的な力量に気おされているようだった。
しかし数週間後、届いた通知は無機質な一文だった。
「慎重なる選考の結果、貴殿のご期待に沿いかねる形となりました」
山岸はしばらくその文面を見つめていたが、やがて静かに封筒を机に置いた。
数日後。ある居酒屋の片隅で、選考委員だった老教授が酒の力を借りて本音を漏らした。
「いやあ、あの山岸君は凄すぎたよ。あんなのを採用してみろ、我々の講義がどれほど退屈で旧態依然としているか、学生たちに露呈してしまうじゃないか。そんな恐ろしい真似、できるはずがない」
隣の教授が、にが笑いを浮かべて同調した。
「教授選ってのはね、優れた才能を “選ぶ” 場じゃない。自分たちの椅子を “守る” ための儀式なんだよ」
季節が巡り、山岸のもとに応募した別の大学から一通の封筒が届いた。
そこには、簡潔ながらも力強い筆致でこう記されていた。
「貴殿のような知性を、我が校の誇りとしてお迎えしたい」
山岸は静かに頷くと、窓の外に広がる青空を見上げた。
ー 終り ー ご高覧ありがとうございました。(^^♪
※ 本作はフィクションであり、実在の大学とは
一切関係ありません。
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