ビンゴが揃う、私の朝 【シロクマ文芸部】
ゆっくりと目覚めていい朝は
せいぜい週に一度だけ。
息子の学校が休み
娘のバイトが休み
私の仕事が休み。
それが揃うのは
だいたい週に一度だけ。
母親というものは
子どもの朝の横にいる。
私の仕事が休みでも
子どもたちが出かけるなら
その背中を見送りたい。
息子には
朝ごはんを食べさせたい。
寝癖のついた髪を直したい。
「行ってらっしゃい」と言いたい。
娘には
いつもは電車で通うバイト先に、
たまには私の車で送り届けたい。
車の中で
娘が選ぶピアノ曲をBGMに
たわいもない話をしたい。
休みのビンゴが揃う日には
私にもゆっくりな朝が許される。
太陽はとっくに起こしに来てるけど、
ごめんね、今日はまだ起きない。
今日は誰も見送らなくていい。
朝、母親にならなくていいの。
普段ならとっくに起きている時間に
まだ、ぬくぬくと布団の中という贅沢。
だらしなく遅く起きて
パジャマ姿のまま
しばらく過ごす。
消費期限が昨日までの
六枚切りの食パンがあるのを思い出す。
冷蔵庫からかき集めた素材を
適当に挟み込み
大口を開けて
ほおばってみる。
私のワンバイトが
入れすぎたマヨネーズやら
細かくしすぎたスクランブルエッグやらを
ぐにゅりとパンからはみ出させる。
唇の右側に
マヨネーズがくっつく。
スクランブルエッグが
餅まきの餅のように
威勢よく投げ出されていく。
気合いの入らない
一人のダメ人間の朝。
きれいに食べることよりも
貪りつきたい私が前に出てきて、
こぼしたり、汚したりを許容する。
ゆるんで、ゆるんで、
ゆるみっぱなし。
三つの穴が整然と開けられた
ビンゴカードは
贅沢な朝への招待状だ。
気取らなくていい。
ちゃんとしなくていい。
自分を甘やかしていい朝。
自分時計を後ろ倒しにしてもいい朝。
ビンゴが揃った日。
ゆっくりと、
私の朝が始まった。
