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占いに振り回されるどころか、占いを振り回す娘の話



娘は、100人に1人の逸材らしい…。



私の友人の紹介で
年配の男性が娘を占ってくれたことがある。



人には「心の強さ」が5段階あるのだという。



ちなみに私はランク2。  
どうやら弱い部類らしい。


そして娘は、最高ランクの5。


「5はね、100人に1人ぐらいかな」


占い師はそう言っていた。



娘の人生は、まだ18歳だけれど、  
はたから見れば挫折のオンパレードだ。



中学校では強豪の部活に入り
体調を崩し1年間不登校。

その後、3年生から
学校に再び行けるようになる。

高校受験では
合格した3校の中で
最も自由な校風の学校を選び
遠くまで通った。



楽しく全力でいろいろ挑戦し、
精神的にも随分成長した。



しかし、また体調を崩し
3年生の後半に出席日数が危うくなり、
留年を避けるために退学し、
通信制高校へ転校。



時間が自由になってからは
自分でアルバイトを見つけてきて
働きながら通信制高校のレポートをこなし
スクーリングやテストもやり遂げた。



ただ、卒業式はオンラインだし
卒業アルバムもない。
一般的な高校生の卒業とは
ちょっと違う形にはなってしまった。



でも本人は、
そんな人生をあまり気にしていない。


「なんとかなるっしょ。  私、5だから」




どうやら占いの結果を、  
本気で信じているらしい。



娘はやりたいことに全力を注ぎ
力尽きて倒れる。


そして、しばらく「冬眠」する。


エネルギーがたまると
今度はおしゃれという名の「鎧」をまとう。


思えば
オシャレに制約のある中学生の頃から
前髪をミリ単位で整えていた。


高校はメイクもOKだったので、
バッチリとメイクを決め、髪を巻き
武装を整える。

そうして再び
外の世界へと飛び出していくのだ。


……そしてまた、倒れる。

冬眠…回復…出陣。


娘の人生は
そういうサイクルで回っているんだな。



学校という枠の中にいると、  
行けない日が続くだけで「不登校」とラベリングされる。



なんだか残念な人のような扱いを受ける。



でも娘は、最初から 、
別になんとも思っていなかったらしい。



娘は欠席日数が多い。



だけど
修学旅行や合唱の伴奏など
自分にとって外せない行事には、全力で行く。



そしてそのあと、  
どっと疲れて行けなくなったりする。



それならば



「頑張りすぎると行けなくなるから  
伴奏は他の子に任せようかな」



そんな選択肢もあるのだろう。



でも娘には、その発想がない。


旅行は好きだから、
行かないなんてあり得ない。



ピアノは彼女のアイデンティティだから
他の人に譲る気はない。



そのあと倒れてもいい。



それでも



「旅行に参加します」
「私が弾きます」



そういう生き方らしい。


理解するのに、時間がかかった。


だって私は普通の人だもの。
どこにでもいる母親だもの。




出席日数も気になるし
不登校は困る。



毎日学校に行くことこそが
まずはスタートラインに立てること
そんな風に思って疑わなかった。


危なっかしい生き方の娘を
受け入れることができなかった。



でも、ある時ふと思った。



もし、死ぬ前に  
どうしても会いたい人がいたとする。



その人に会いに行くと  
体力を消耗して寿命が1年縮むと言われたら?



「わかりました。一日でも長生きしたいから、会いに行くのは諦めます。」

そう言って、病院のベッドの上で、天井を見つめながら1年過ごすのだろうか。



それとも  
会いたい気持ちを優先し、最後に会える1時間を選ぶだろうか。



どちらが大切かを決めるのは、本人だ。



長生きするのは素敵なこと。



でも今は、  
短く生きる人生があっても
いいんじゃないかと思っている。


おじいちゃん、おばあちゃんになる前に
人生が終わったとしても
本人にとって満たされたものであれば
周りが残念がる必要などないのかもしれない。


私たちは生きていると
長く穏やかな時間とは引き換えに
濃く深く、命が輝く瞬間がある。



自分にとって価値があることは
自分にしか選べない。



化粧にネイルにピアス…。


作り事だし、飾りだし、鎧つけてどこ行くの?
大切なのは中身だよ…。
昭和の母はそう言いたい気持ちも正直ある。



私はどちらかというと  
清楚な外見の方が好きだし…。


だけど、自分を飾ることが
たまらなくエネルギーに変わる子みたい。



娘は今日も
アイドルみたいな格好をして出かけていった。



ははははは。



良かった、良かった!



言いなりにならない娘で、本当に良かった。



だって、何年後かに


「私、本当はピアス開けたかった」  
「アイドルみたいな格好したかった」



なんて責められることはないのだから。



自分で選んで自分でやってる。



娘は縛られるのが嫌なのだそうだ。
そりゃあ学校が疲れるわけだ。



そして娘はこう結論づけた。

「会社勤めは、たぶん無理。」

だから個人事業主になるそうだ。



通信制の大学で経営を学びながら  
バイトをしてお金を貯める。



そして2年後、  
家を出て都会へ行く。



そんな青写真を、もう描いている。



占いは、振り回されると  
身動きが取れなくなる。



でも、占いを振り回すと、  
案外最強になれるのかもしれない。


自分にとって良い占いの結果を
信じ切れるかどうかは
どこにも根拠のない自信を
手に入れられるかどうかだと思う。



強さレベル「2」の私は
心配性で真面目で
人生の楽しみ方を知らずに生きて来たんだなぁ。


最近やっと気づいた。



でも、年齢とともに  
レベル「3.5」ぐらいにはなっている気がする。



人はずっと弱いままではない。
経験値が増えると、武器も増えるから。



そして
試練の多い人生というのは、
いつまでも「2」のままではいさせてくれない。



気づけば少しずつ、  
強くなっているのだと思う。

強さとは
外に向かって攻撃をしかけ
自分が傷つかないようにする力ではない。



強さとは

弱い自分を抱きしめて
生きていく力だと思う。




娘は今日も元気に出かけて行った。



最近開けた耳に、ピアス輝かせ
春らしい色に染めた髪をカールして。


心には
いつでも取り出せるように
レベル「5」のお守りを抱いて。


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