半年間、キッチンに小さな罪悪感があった
いつかやろうは馬鹿野郎と言うが、Amazonから届いたキッチンツールフック半年放置した私は一体なんだというのだろう。
やらなきゃ、と思っていた。
やりたい、とも思っていた。
ただ、別段困っているわけではない。
キッチンツールフックがなくとも、人は生きていける。
そうして先送りにし続けた結果、半年が経った。
その半年間、私はずっと、微妙な罪悪感を抱えていた。
視界の端に映る未開封の箱。
「まだやっていない」という焦りにも似た感覚。
取れない焦げのように、脳内のタスク領域をじわじわ占拠しているそれに、少し苛立ってもいた。
わかっている。
組み立てればいいのである。
それだけなのである。
Twitter(X)を見る時間はある。
YouTubeを見る時間もある。
何もせずただ過ぎていく時間もある。
なのに、キッチンツールフックを組み立てる時間だけが──存在しない。
これは一体どうしたことだろう。
しまいには、「私はキッチンツールフックを組み立ててはいけない呪いにでもかかっているのでは?」という気さえしてきた深夜、突如もう明日に備えて寝なければいけない時間になって──、少しでも早く入眠しようと用意したホットミルクが冷めていくのを横目に私は衝動的に段ボールを開封していた。
この、なんなんだろう、逆張りみたいな、行動は。
縦長の筒は開けてみるとメインパーツはたったの6つで、取り付け手順もたったの4ステップ程度で、一人暮らしに喧嘩を売るような「二人一組でやりましょう!」みたいなしゃらくささは全然なかった。
いつも大体の家具の手順書をネットミームのプーさんみたいな顔をしながらにらみつけている私に、その時間さえ与えなかった。
ものの十分でキッチンツールは我が家に導入され、なんかちょっとイイ感じに整った。
できてしまえば楽なものだった。
面倒くささなんて私の想像の中にしかなく、拍子抜けするほど簡単だった。
ぼんやりとあった悩みの種があっさりと解決してしまったこと、そしてこんなに容易なことだったのに放置していた自分への失望、やっとひとつタスクを終えられたことへの安堵がないまぜになって、小さなため息に。
なんでもっと早くしなかったんだろう?
大した労力でもないくせに、見合わない時間をかけてしまった。
馬鹿だな。
わかっている、私はきっとまた同じ後悔をするのだろう。今までだって似たような後悔を積み上げてきた。
でも、次のタスクは半年よりは早く終わらせるべきだ。
取り急ぎ、使ってないサブスクの解約とか。
