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【焼尻島&天売島】鳥に興味ゼロな女をもトリコにする島

「乗り物に酔う人が、そんな遠くへ?」

驚かれるのも当然のこと。
私が旅したのは、移動だけで1日かかる北海道の僻地。

でも、旅を終えて思う。
遠くからわざわざ訪れるだけの価値ある、尊い島だった。心から行って良かった。

1日目 札幌

札幌に着いたのは、夜。
19時でもまだ薄明るいのが嬉しくて、用もないのに街を右往左往。

最初にすべきは、旅のおともを入手すること。
迷うことなく六花亭へ。いつでも六花亭が買える事で、北海道にいることを実感する。

どれもハズレ無し

移動費がかかる為、食費は節約と決めた。
そこでセイコーマートの出番。
夕食計500円。コスパの神様。

2日目 焼尻島へ

今日は、酔い止め薬頼みの一日。
高速バスで札幌を発ち、北上すること3時間で西沿岸の町・羽幌へ。
灰色の空が、寂れた町をなお淋しげに映し出す。

町を歩いて港へ向かった。
日本海はなんて曇天が似合うのだろう。

港には、既に船が待ち構えていた。
身体がぎゅっとする。
これがウワサの大揺れ船、おろろん号か。
可愛い名前からは想像し難いけれど。

小ぢんまりしたフェリーターミナル内に、かあちゃん食堂だけがオーラを放っていた。
節約と決めてるのに、メニューのラインナップに決意が揺るぎそう。
ダメダメ。乗船前に満腹なんぞ自爆行為だ。

船内に乗り込むと、横になれるポジション確保へとまっしぐら。
後から来た一人旅らしき男性4人もおのおのスペースへ寝転がり、定位置が決まった。

そこから1時間の航海中、ただただ横になって固く目を閉じていた。
波が比較的穏やかだった事もあり、なんとか酔わずに焼尻島へ到着。
薬の威力たるや。

少数の客が焼尻島に降り立ったものの、すぐ散り散りになると、あっという間にフェリーターミナルは静寂に包まれた。
迎えてくれたのは、ネコだけ。見慣れぬ人間の動向をいぶかしげに窺っている。
ああ、いかにも島に来たな。

港をウロウロしていると、無造作に置かれた木箱を発見。
これはもしや!

なーんだ、残骸か。
傍らで、カラスと海鳥がウニを巡ってせめぎ合っていた。

焼尻島・天売島の名産は、ウニ。
でも、ウニ漁解禁日まではあと一週間。
旅の道中には間に合わない。タイミングが悪すぎて笑える。

右へ左へとヨロヨロ寄り道しながら宿に到着したのは、16時頃だった。
宿帳へ書いた私の住所を見て、オーナーが声をあげる。
「私もここの出身なんですよ」
盛り上がるところへ現れた宿泊客のオジサマも、同じ関西人。
日本の北の端で、にぎやかな関西弁が飛び交うのだった。

「これから雨降りますかね?」
「うむ。ただ、夕飯まで時間があるし、宿に居ても勿体ないかな」
オジサマと共に付近を散策することにした。

ひとりじゃ心細くなるような鬱蒼とした森の中も、オジサマとあーだこーだ会話しながらなので極めて軽快。
手つかずの森は、濃厚で豊かで深い。
1時間ほど歩き続けると

ぱっと視界が開けたその先には、西洋映画の舞台みたいな光景が広がっていた。
曇天のザンネン感なんぞ一気に吹き飛ばすような眺め、思わず笑顔になる。

そのうち晴れ間が射し込むと、辺り一帯はなんとも幻想的な世界に包まれた。
今、この世に妖精が存在すると言われたら、信じてしまいそう。
こんな景色に会いたくてここまで来たんだ。
海の向こうに、天売島の島影が見えた。

誰ひとり出会わない。
目の前の絵画みたいな景色をひたすら独占している事実。
それもまた、絶妙に心地良かった。

人間とは出会わないが、ときどきネコとは出会う。
散策の帰路で出会ったのは
ごろりーんリラックスモードな子。

空き家になってしまった家を守る健気な子もいた。こちらは警戒心が強く、人影に気づけばそそくさと家の中に逃げ込む。

3日目 焼尻島・天売島

昨夜は、同宿のオジサマやオーナーさんと穏やかに過ごした。
全員が島旅好き同士なので面白い。
ゲストハウスの居心地は、メンバーによって左右される。

さあ。
今日はレンタサイクルで焼尻島一周だ!
勇んで宿の玄関を開けたら、
玄関前にでーんと待ち構えていた子。
早速オーナーの寵愛を受ける。耳が不自由なのだそう。

港で電動レンタサイクルを借りたら、
さっそく出発だ。
まずは、昨日訪れた森を通り抜けなきゃ。

ここはまだ序の口。両側から木々がぐっと張り出した舗装なき細道が続く

昨日の雨でぬかるんでいるわ。
道は細いわ。
木々が道に張り出しているわ。
早く切り抜けたくて焦るわ。
そんなこんなで手元操作を誤り、派手に転んでしまった。
辺りに誰もいないのは、良いのか悪いのか。

森を抜けると、視界が一変する。
スコーンと抜けた真っすぐな道の両脇に牧草地が広がり、遠くに海。
果てしなく広い空。
爽やかな風を首元に感じながら走り抜ける自転車の爽快感ったら。

道の両手にめん羊牧場とのことだが、タイミング悪く羊はおらず。
代わりに初夏の花たちが次々に現れては、行く手を彩ってくれる。

この道は天国まで続くのか?と思いきや
島の西端「鷹ノ巣園地」に到着した。

隣の天売島が大きく確認できる。

ここからは折り返し。
海沿いに長い長い下り坂が続く。
これが最高だった。
大自然のシャワーを全身で浴びるかように、風の中を駆け抜けていく。
筆舌に尽くしがたい絶景に目を奪われ、瞬きすら惜しい。

起伏のある島に、電動レンタサイクルは最高の相棒。
この風景のためなら、多少の上り坂だって全然耐えられるぞ。

緑と碧のコントラストが眩しい。
この大自然に叶うものなどあるワケない。
本当の美しさとは、余計な手を加えないことだと思う。

エゾカンゾウが、あちこちで風に揺れていた。

これはきっと島に歓迎されてるよな。
勝手に解釈して、勝手に喜んで。

ずいぶん下ってきた。
つまり、もうすぐ一周が終わってしまう。
名残惜しくてたまらない。

遠くに利尻島が見える…はずの場所で、おにぎりを頬張った。
澄んだ景色もご馳走のひとつだ。

ああ、ついに港に戻ってきてしまった。
もう一周したい衝動に駆られた。

小ぢんまりした番屋

「アンタ元気ね」と言わんばかりの表情を向けられた。

港のあたりを歩きながら、余韻に浸る。

この子はとても人懐っこく、躊躇なく足元にすり寄ってきた。
人たらし、ならぬ「猫たらし」め。

今日は、ウニ箱にネットがかかっている。

昨日と打って変わって、青空に船の白がよく映える。
快晴だが、何便か船が欠航しているらしかった。

自転車を返したら、天売島に渡る。
港で船を待っていると、同宿のオジサマが大きな荷物抱えて現れた。
偶然、同じ便で天売島に渡るようだ。


天売島に着くと、早々に宿の送迎車が待っていた。
「良い旅を!」
オジサマと別れ、それぞれ宿の車へ。

夕飯まで中途半端な時間だったので、散策は諦めた。
その代わり、宿の前に絶景ベンチを発見!
そこでひたすら海を眺めていた。
ゆっくりじっくり時が流れていく贅沢。

ベンチからの風景。
さっきまで居た焼尻島は「お好み焼き」のようにペッタンコだ。

まだ日は高いけれど、夕飯の時間。
地産が多いのか、海鮮と海藻づくしだ。

「夜のウトウツアーに行かないんですか?」
宿のオバサンに訊かれた。
「この時期に島に来る人は、ウトウを目的に来られる方が多いんですよ」


天売島は、鳥の楽園。
初夏の時期、世界でココでしか見れない「ウトウの帰巣」という希少な機会を求めて、鳥好きが島に集まるらしい。



さっきまで一緒だったオジサマも
同宿の親子も
ウトウ帰巣を見るナイトツアーに参加するらしい。

「そこまで鳥に関心がなくて、アハハ」
と愛想笑いで濁す私だったが、後で後悔することになるとは。


4日目 天売島

起きてすぐに空をチェック。
曇天か。
でも、迷ってる時間はない。 
今日は、天売島を電動レンタサイクルで一周する。

漕ぎ始めて暫く行くと、見えてきたその光景に、思わず自転車を放り出し駆け寄った。
ウミネコの群れが、辺り一帯を埋め尽くしている。
手の届く距離から遥か彼方の崖まで、何万羽いるのだろう。
ヒッチコックの映画さながらの大群だ。
飛び立っては戻り。
翼を広げては空に舞い。
まるで潮風と遊ぶかのように自在に陸と空を行き来する鳥たち。

360度見渡す限り、ウミネコだらけ。
ワイルドライフ。
あまりの迫力に圧倒され、思わず身震い。
島に来て良かった。
目を離すのが勿体なくて、いつまでも釘付けになっていた。
自然とは無縁の環境で生活を送ってきた私にとって、野生動物の営みを間近に見られる光景は感動が大きかった。

私がいつまでも立ち尽くしているので、何度か空からの洗礼を受けた。
服にべっとり。髪にぽとり。
まいいか、これも島の勲章だ。

ヒナがいた。
フワフワ毛羽立っていて可愛い。
人影を感じると、誰より早く茂みに隠れてしまう。本能かな。

海外のようでワクワク。
日が暮れるまで何時間でもずっと見ていたいのだが、先を行かなきゃ。
鳥好きでもない私をトリコにさせる天売島、おそるべし。

途中で昨日のオジサマに出会い、一緒に島を廻ることに。
というか、方向音痴の私がついていくだけ。
起伏が激しい天売島だが、電動レンタサイクルの力は偉大。
ヒーヒー言いながら坂を登ったその先には、絶景が待っている。

これでもし天気が良かったら・・・。
いやいや。
近いうちに島を来訪する大義名分が出来たじゃないか。
今度来たら、快晴の景色を見るんだ。

手の届かぬところにある花は、令嬢のように気高く可憐に。

一面の緑のなかを、ルンルンと鼻歌まじりに自転車で駆け抜ける。

緑って何色あるん?
そんなのどうでもいいか。

自転車のまま、ノンブレーキで駆け下りた坂道。
このまま焼尻島まで下って行けないかな、と本気で思ったり。

徒歩で島を廻っているという健脚者に遭遇。
焼尻島も徒歩で踏破されていた。リュック一つで軽やかに。

こうして、天売島一周は終了。
島を去るときに思った。
「やっぱりウトウの帰巣ツアーに参加すれば良かった」
次に来るときの課題が出来た。


午後に羽幌に渡り、オジサマに町まで乗せて頂いたあと、お別れ。
夜には札幌に戻ってきた。
ちなみに。
この日、ネットカフェ泊に初挑戦。
想像以上に快適すぎて、今後、一人旅の宿の選択肢にレギュラー入り決定。

5日目 札幌→帰路へ

最終日の札幌。
地下鉄に乗って八紘学園へ。
探し求めていた念願の朝採れアスパラガスを入手したり。
ネット繋がりの北海道在住の方とも楽しくお会いしたり。
今日も希望が叶えられた日。

八紘学園の広大な敷地には、農産物直売所やソフトクリーム販売店の他、散歩にぴったりの素敵な並木道が。
北海道大学といい、八紘学園といい、自然豊かで気持の良い学び舎が羨ましい。

ハジメマシテの女性とは、六花亭のクラシカルな喫茶室で。
札幌駅周辺の店舗と違って、そこまで混雑してないのがいい。

こうして旅を終えた。
焼尻島・天売島ともに、ズバ抜けて私の理想とする旅先。
再訪したいナンバー1の島になった。

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