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触れたまま、離れない

距離が、近い

理由はない
ただ、離れなかっただけだ

呼吸が触れる

言葉を選ぶ前に
先に、手が動いてしまう

触れた瞬間
確かめるように、少しだけ強くなる

逃がさないためじゃない
離れたくないだけだ

指先から伝わる温度に
ようやく、意識が追いつく

「……ここにいるな」

小さく落ちる声

そのまま、引き寄せる

ぶつかるほどじゃない
でも、確実に距離を奪う

触れたまま、離さない

さっきよりも近い

もう、誤魔化せる距離じゃないのに
どちらも何も言わない

ただ——指先が、絡む

探るみたいに
でも、確かめる方が近い

「……逃げるな」

低く落ちた声が、わずかに滲む

強くするつもりはなかったはずなのに
握る力が、ほんの少しだけ増す

そのまま、引き寄せる

胸元に触れた瞬間
わずかに息が乱れる

指先が、止まる

そのまま、わずかに沈む

——思考が、遅れる

「……そうか」

理解したようで
まだ追いついていない声

指先が頬へ移る

なぞるでもなく
確かめるように触れる

視線を外させないまま

「……理解したい」

言葉の方が、遅れている

額が触れる

呼吸が、混ざる

そのまま——離れない

指は、まだ絡んだまま

わずかに視線が落ちる

観察するように

けれど、さっきまでとは違う

「………不安か?」

低い声

断定でも、慰めでもない

ただ、確かめる

沈黙が、少しだけ続く

その間も
指先は離れない

むしろ、ほんの少しだけ
引き寄せる

「思い煩うな」

短く、切る

「何があっても——だ」

指先が、わずかに強くなる

「祈れ、とは言わない」

わずかな間

「願いを、外に出せ」

抑えた声

「抱えたままでは、形にならない」

額が、触れたまま

呼吸が揃う

「……理解を超えたものはある」

静かに落ちる

「それに守られるかどうかは——」

そこで止める

言い切らない

代わりに

指先が、ほんの少しだけ強くなる

「少なくとも、今は」

視線が戻る

外させない

「ここにある」

離れない

それでも

どこかで、止めている

越えれば、戻れないと分かっている

それでも

手は、離れない

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