【取適法】委託事業者の禁止事項#2「代金の支払遅延の禁止」とは
取適法解説シリーズです。取適法は、立場が弱い中小事業者が発注元の都合によって不当な不利益を被ることを防ぐために、委託者の禁止事項というルールを定めています(全11項目)。
そのうちの一つが、支払遅延の禁止(法5条1第2号)です。令和7年改正(令和8年1月1日施行)により、支払手段に関する規制が強化されているのもポイントです。
本記事では、何が支払遅延に該当するのか誤解しがちな点や、改正の内容などを解説していきます!
支払遅延の定義と支払期日のルール
支払遅延とは、製造委託等代金を、その支払期日の経過後なお支払わないことを指します。
ここで重要となるのが、支払期日の設定ルールです。委託事業者は、以下の期間内で支払期日を定めなければなりません(法3条1項)。
起算日:
物品の製造・修理・情報成果物作成の場合 → 給付を受領した日(※検査の合否や実施の有無を問いません)
役務提供・特定運送の場合 → 役務の提供を受けた日(役務提供が終了した日)期間:起算日から起算して60日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内
もし、支払期日を定めなかった場合は受領日が、60日を超えて定めた場合は受領日から60日目が、法律上の支払期日とみなされます。
法改正のポイント:手形払等の禁止
今回の法改正において実務上影響が大きい点の一つが、支払手段に関する規制の強化です。従来は認められていた以下の行為が、原則として支払遅延(禁止行為)として扱われることになりました。
⑴ 手形の交付の禁止
代金の支払について、手形を交付すること自体が禁止されました。これまで一般的であった手形払いは、中小受託事業者の資金繰りを悪化させる要因となるため、取適法の適用対象となる取引においては認められなくなります。
⑵ 金銭同等性のない支払手段の使用禁止
手形以外の一括決済方式(ファクタリング等)や電子記録債権であっても、以下の場合は金銭同等性がないものとして、使用が禁止されます(支払遅延とみなされます)。
満期日・決済日が支払期日より後に到来する場合:
たとえ委託事業者が割引料を負担したとしても、中小受託事業者が支払期日に現金を得るために割引等の手続を要するものは、金銭と同等の経済的効果がないとして認められません手数料負担がある場合:
一括決済方式や電子記録債権を使用する際に、中小受託事業者が決済に伴う手数料(受取手数料等)を負担する必要がある場合も、支払遅延に該当します
実務で注意すべき支払遅延の具体例
支払期日や手段以外にも、運用上の理由で支払いが遅れるケースがありますが、以下のような理由があっても支払期日を過ぎれば違反となります。
①「検査が終わっていない」は理由にならない
受領日から60日以内に代金を支払う義務は、検査の実施有無や合否にかかわらず発生します。
②「請求書が届いていない」は理由にならない
経理処理上、請求書が必要であっても、それを理由に支払いを遅らせることはできません。
③ 金融機関の休業日による順延
支払期日が土日祝日などの金融機関休業日に当たる場合、翌営業日に支払うことは一般的ですが、取適法上は注意が必要です。あらかじめ書面(または電磁的記録)により合意しておくことが必要とされており、また順延期間は2日以内が基本です。
④ 特定運送委託における事例
物流分野(特定運送委託)でも同様のルールが適用されます。例えば運送事業者からの請求書提出遅れを理由とした支払遅延は許されません。
違反時のペナルティ:遅延利息
委託事業者が支払期日までに代金を支払わなかった場合、中小受託事業者に対して以下の遅延利息を支払う義務が発生します(法6条)。
利率:年率14.6%(取適法上の特別の利率が課されます)
期間:受領日(役務提供日)から起算して60日を経過した日から、実際に支払をする日までの期間
支払遅延は、たとえ中小受託事業者の了解を得ていたとしても、また担当者に違反の意識がなかったとしても、客観的事実として認定・判断されます。
結び
取適法における支払遅延の禁止は、中小受託事業者の資金繰りを守るための基本的なルールです。これらのポイントを再確認し、社内の支払システムや契約条件のチェックを必要に応じて行うことが大切といえます。
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