ストーリーの骨格は7-3-5で全部つくれる
「この人の話、なんかおもしろいな」
そう思ったこと、ありませんか。
プレゼンの途中で、思わず前のめりになった。
自己紹介を聞いていたら、気づいたらその人のファンになっていた。
全部、ストーリーの力。
逆に言えば、「なんか退屈だな」と感じるとき、足りないのはだいたい物語の骨格だったりします。
でも、こう思いません?
「物語論とか、学んでもどうせ使えないでしょ」って。
わかります。ぼくもそう思っていました。
でも。
最低限これだけ知っていれば、どんな話でも骨格が見えるようになる。
しかも、自分でつくれるようになる。
そんな小さな方程式があるんです。
今日は、小説だけじゃなく、自己PRや、自分の商品を魅力的に語るためのストーリーづくりについて、知っておくべき最低限のことを話します。
物語論の基礎なんですけど、とってもパワフル。
まず、この短い物語を読んでみてください。
私は幼い息子をひっぱたいた。私の怒りは強力だった。正義のように。そのあと手に感覚がないことに気づいた。私は言った、「よく聞け、おまえに複雑なことを説明したい」。私は真剣にていねいに、とくに父親というものについて話した。私が話終えると、息子は許してほしいかと訊ねた。私はイエスと答えた。息子はノーと言った。切り札を切るように。
これは、アメリカの短編小説家レナード・マイケルズによる「手(The Hand)」というとても短い物語。
なのに、読み終えたあと、胸にずしっと残るものがある。
なぜなら、物語に必要なものがしっかりと詰まっているから。
この短い物語を例にして、ストーリーに必要な要素を見ていきましょう。
物語に必要な7つの材料
「ストーリーをつくりたいけど、何が必要なの?」
じつは物語には、7つの材料があります。
さっきの「手」を当てはめていきますね。
主人公 ── 私(父親)
敵対者 ── 息子
発端 ── 手の感覚がないことに気づく
欲求 ── 自分の正当性を説明したい
危機 ── 「私が話を終えると、息子は、許してほしいかと訊ねた」
クライマックス ── 「私はイエスと答えた。息子はノーと言った」
解決 ── 「切り札を切るように」
この7つ。
主人公がいて、
対立する相手がいて、
何かが起こって、
欲しいものが生まれて、
追い込まれて、
ぶつかって、
決着がつく。
どんな壮大な物語も、どんな短いエピソードも、この7つの組み合わせでできています。
「発端」の見分け方が、ちょっとむずかしい
「え、息子をたたいたのが発端じゃないの?」
そう思いますよね。ぼくも最初はそう思いました。
でもここが分かれ目なんです。
発端の定義は「最初に起きた出来事」じゃなくて、均衡を破り、主人公に欲求を生ませる出来事のこと。
たたいた時点では、この父親はまだ均衡の中にいます。
「私の怒りは強力だった。正義のように」
彼にとって何も問題は起きていない。むしろ正しいことをした、と思っている。まだ何も欲していない。
ところが「そのあと(Then)」がくる。
手に感覚がないと気づいた瞬間、「正義」という確信にひびが入る。そこではじめて「説明したい」という欲求が生まれるんです。
原因はたたいたこと。
でも物語を動かし始めた点は、無感覚に気づいた瞬間。
ここの違い、わかりますか。
ただの出来事じゃなくて、主人公の心に何が起きたかで見る。これが「発端」を正しく見分けるコツです。
「切り札を切るように」が解決である理由
「最後の一行がなぜ解決なの?」
ここもぼくが最初につまずいたところです。
冒頭に「正義のように(Like justice)」がありますよね。
末尾に「切り札を切るように(Like trumps)」がある。
同じ形の比喩が、物語のはじまりと終わりに置かれています。
前者は父親の自己欺瞞。
後者はその訂正。
「あれは正義なんかじゃなかった。ゲームだったんだ」と、物語自体が言い直しているんです。
しかも「切り札」という言葉は、父と子の関係そのものをひっくり返しています。
父親は真剣に、ていねいに、長々と語りました。父親というものについて。その修辞的な権威、大人としての正しさ。
でもそのすべてが、息子のたった一言「ノー」に敗れた。
許しを与えないでいられる者が、このテーブルでは最強のカードを持っている。たたいた側が、たたかれた側に許しを乞うている。立場が完全に逆転している。
父親はそれを、自分が負けた瞬間にはじめて理解するんです。
世界の意味が更新される。これが「解決=新しい均衡」です。
3つのブロックで物語を区切る
「7つの材料はわかった。でもどう並べればいいの?」
ここからはブロックの話です。
まずは映画でおなじみの三幕構成。
第一幕(設定)── 父が幼い息子をたたく。怒りは正義だと信じている。しかし手の感覚がないことに気づき、確信にひびが入る。「説明したい」という欲求が生まれ、正義の側から釈明する側へ踏み出す
第二幕(対立)── 父は真剣にていねいに、とくに父親というものについて語る。説明はいったん完遂される。だが語り終えた瞬間、息子が「許してほしいのか」と問い、言葉の主導権が父から息子へ移る
第三幕(解決)── 父は「イエス」と答え、正義という立場を手放す。息子は「ノー」と言う。父は敗れ、これが正義の裁定ではなく、許しを与えないでいられる側が勝つゲームだったと理解する
この三幕構成、シンプルでわかりやすいですよね。
既存の物語を分析するときにはとても便利です。
ただ、自分でゼロからストーリーをつくるとき、ちょっと困る。シンプルすぎて、「第二幕で何を書けばいいの?」ってなるんですよね。
そこで登場するのが、五幕構成です。
5つのブロックで物語をつくる
基本的には三幕の第二幕を3つに分解して、第二~四幕にしたものだと思ってもらえれば大丈夫です。
第一幕(設定):行動のきっかけ
第二幕(上昇):物事がうまく進み、最初の目的が達成される
第三幕(転換):敵対する力が強さを増し、物事がうまくいかなくなる
第四幕(危機) :物事がさらに悪い方向に進み、危機的状況を招く
第五幕(解決):クライマックス。敵対者との最終決戦。事態は良くも悪くも解決する
これを「手」に当てはめてみますね。
第一幕(設定)── 父が幼い息子を強くたたく。その怒りは正義だと信じている。しかし直後、自分の手に感覚がないことに気づき、確信にひびが入る
第二幕(上昇)── 父は「複雑なことを説明したい」と言い、真剣に、ていねいに、父親というものについて語る。語り終える。最初の目的である「自分の行動を説明する」は達成される
第三幕(転換)+ 第四幕(危機) ── 息子が「許してほしいのか」と問う。それまで殴られ説教される側でしかなかった息子が、初めて能動的に動く(転換)。同時にその一問は、父の長い説明が実は許しの懇願だったと暴き、説く者を乞う者へ転落させる(危機)。敵対者が主体化し、主人公が丸腰になる。それが同じ一文の表裏として起きる
第五幕(解決)── 父は「イエス」と答え、正義という立場を自ら手放す。息子は「ノー」と言う。父は敗れ、同時に理解する。これは正義の裁定ではなく、許しを与えないでいられる側が勝つゲームだったと
『手』はとても短いので、ここでは第三幕と第四幕がセットになっていますが、三幕構成よりも物語の構造が細かく分解できました。
五幕構成のいいところは、「次に何を書けばいいか」が明確になること。
いま自分が書いているのは上昇なのか、転換なのか、危機なのか。それがわかるだけで、手が止まらなくなります。
自己PRも、商品紹介も、同じ骨格でつくれる
ここまで読んで、こう思いませんか。
「小説の話でしょ? 自分には関係ないよ」って。
でも、考えてみてください。
面接での自己PR。
自分の商品やサービスの紹介。
SNSでの発信。
全部、「誰かに何かを伝えたい」場面ですよね。
そのとき、ただ事実を並べるだけだと、相手の心は動きません。
必要なのは、
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