創作童話~ハリボテの金魚
むかしむかし、豊かな村に一人の夢見る男がいました。
ある日、遠い国から「喋る金魚」を作る金魚屋がやってきました。

それを見た夢見る男は、直観に従って村人たちに言いました。
「この金魚は、神になる。これに投資すれば村はもっと豊かになる」
男は村中の人からお金を借りて集めました。
そして、金魚屋にお金を渡して、完成を心待ちにしていました。
ところが金魚屋は自分の故郷に帰ると言いました。
「この金魚は、故郷のみんなのものだ。特定の誰かのためのものではありません」

じつは、金魚屋は、昔、金魚の開発に故郷の大商人からお金をもらっていました。代わりに、一番良い金魚や利益を大商人と共有することを約束していました。
だからもう、夢見る男に渡せるものはなかったのです。
金魚を、一部でも独占する事が出来ると思っていた男は、そのアテがはずれてしまいました。そして、借りたお金を返すことも難しくなった男は、村の殿様に泣きつくことにしました。
「殿様、この金魚は村の未来です。どうか税金で助けてください。」
男は〈金魚の第一人者〉と〈ハリボテ金魚〉をみつくろい、殿様にレクチャーをしました。

殿様はこれまで金魚が流行っている事は何となく知っていましたが、実際に見たことはありませんでしたので、とても驚きました。
「百聞は一見に如かず!我々が金魚のリーダーシップを取るぞ!」
家来も、そのハリボテ金魚を大いに褒めそやしました。
「さすが我々の村の金魚だ!」
「世界に誇るべきわれらの技術!」
「やはり我々は優秀だ!」
ごきげんの殿様は、男の借金を税金で肩代わりしました。
村の人たちは、今日もハリボテの金魚を囲んで、「我々は遅れてなどいない」と胸を張り続けています。
世界では、本物の金魚が取引されているというのに…

