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採用AI通信 Vol.10|HR全廃CEOと25億AI採用の衝撃

「HRは間違ったエネルギーだった」——決済スタートアップBoltのCEOがHR部門を全廃しLinkedInで発言した言葉が、今週世界中のHR担当者の間で議論を呼んでいる。同じ週、AI採用スタートアップHumanlyが25億円を調達し、採用品質の測定にAIが使われはじめている。そして日本では、kubellが「AI導入の前に捨てる」という逆転の発想で月3,000時間を削減した。加速するAIと揺れるHRの現在地を今号で整理する。



今週の採用×AIニュース5選

1. HR全廃を宣言したBoltのCEO——「HRは存在しない問題を作っていた」

決済スタートアップBoltのCEO Ryan Breslowが、Fortune Workforce Innovation Summitで衝撃的な発言を行った。「HR部門は存在しない問題を作り出していた。彼らを解雇したらその問題は消えた」。LinkedInでも同様の発言を繰り返し、HR部門の全廃を正当化した。2014年にStanfordの寮から起業した同氏は、スタートアップのスピードとHR的な官僚主義を相容れないものと位置づけている。

採用担当へのインパクト:
この発言は極端な例として片付けるよりも、「HR部門が本当に価値を出しているか」を問い直すきっかけとして受け取りたい。AIが採用・評価・労務の多くを担えるようになった今、HR担当者の価値は「プロセス管理」から「組織設計と判断の質」に移動している。Breslowの挑発的な問いに対する最善の答えは、「人間がいなければできない意思決定」に集中することだ。日本でもHRの役割を問い直す議論は避けられない。


2. AI採用スタートアップHumanlyが25億円調達——「採用速度」の競争が激化

AI採用プラットフォームHumanlyがシリーズBで2,500万ドル(約25億円)の調達を完了した。Humanlyは候補者とのAIチャット・スクリーニング・面接日程調整を一気通貫で自動化するプラットフォームで、「採用速度を落とさずに候補者体験を向上させる」をコンセプトに掲げる。CEOのPrem Kumarは「採用担当者の時間を事務作業ではなく、高品質な対話に使えるようにする」と述べている。

採用担当へのインパクト:
AI採用ツールへの投資額は2026年に入って急増している。Humanlyのような「スクリーニング〜日程調整の一気通貫型」ツールが普及すると、採用担当者の仕事は「AIが通した候補者の品質をどう評価するか」にシフトする。日本市場では同様の機能を持つTasonal(HERPとのAI日程調整連携)が国内展開を強化しており、グローバルのトレンドが2〜3年遅れで日本に波及する流れが加速しつつある。


3. 採用品質(Quality of Hire)をどう測るか——指標とAI活用の最前線

「採用コスト削減」や「採用スピード向上」だけでなく、「採用した人材が実際に成果を出せているか」を測る指標として、Quality of Hire(採用品質)への注目が高まっている。定義は「採用後のパフォーマンス評価・定着率・早期離職率・研修完了率・マネージャー満足度」などを組み合わせた複合指標で、採用プロセスと入社後パフォーマンスを紐づけることで、どのチャネル・どのスクリーニング手法が高品質な採用につながるかを定量化できる。

採用担当へのインパクト:
AIを採用に使う企業が増えるほど、「AIが選んだ人材の品質」を測定する仕組みが不可欠になる。採用担当者が今すぐ取り組めることは、①採用後6ヶ月・1年のパフォーマンスデータを採用チャネル別に記録し始めること、②採用時の評価スコアと入社後評価を紐づける仕組みを作ること。このデータが積み上がると、AIスクリーニングの精度を自社データで改善できる。日本でも採用の「結果責任」への問いが高まるタイミングで、先手を打っておきたい指標だ。


4. Recruiting Brainfood #502 ——AI流動性評価と採用TAの再設計

今週号のRecruiting Brainfoodは、企業がAI時代に向けて採用機能をどう再設計しているかを複数の視点から整理した。特に注目されたのがZapierが提唱する「AI流動性フレームワーク」だ——新規採用者がAIをどれだけ自律的に使いこなせるかを採用時に評価する指標で、「あなたのCEOは新入社員のAI活用能力をどう見極めているか」という問いを投げかけている。また、UberのCTOがチームが四半期でAI年間予算を超過したと報告し、HR部門もトークン配分を戦略的に考える必要性が浮上。ZapierやPepsiCoなど複数の企業が採用TA(Talent Acquisition)機能をAI時代向けに再構成している事例も紹介された。

採用担当へのインパクト:
「AIが使える人材を採る」から「AIを前提に採用プロセス自体を再設計する」への転換が、グローバルの先進企業では始まっている。日本でも「AI活用能力を採用基準に入れる」議論が出てきているが、Zapierのフレームワークは具体的な評価軸として参考になる。採用担当者自身がAIを流暢に使えることが、採用市場で評価される時代になりつつある。


5. AI導入の前に「捨てる」勇気を——kubell月3,000時間削減の全貌

グループウェア「Chatwork」を運営するkubellが、全社プロジェクト「すてるば」で月3,000時間・年間1億円超の業務削減を実現した事例をHR NOTEが詳報した。削減された業務の例は「経営報告資料の過剰な作り込み」「複数システムによる承認フローの重複」「リモート時代の不要な1on1」「使用頻度の低いシステム運用」など。経営陣が公式に「捨てていい」と宣言し、現場からボトムアップで不要業務を収集。「削減効果がデメリットを上回るか」を天秤にかける三段階プロセスで決定した。

採用担当へのインパクト:
このプロジェクトが示すのは「AIを導入する前に整理すべき業務がある」という順序の問題だ。採用業務でも同様で、非効率なプロセスをそのままAIに乗せると、無駄な処理が自動化されるだけだ。「この採用業務、そもそも必要か?」という問いを立てる前に、AIツールを探しに行くのは順序が逆かもしれない。人事部門が「捨てる業務の設計者」になることが、AI活用の出発点になる。


今週のClaude活用Tip

使うシーン: 採用業務の棚卸しと「捨てるべき業務」の洗い出し

プロンプト:

以下は私の採用担当業務リストです。
「AI・自動化で代替可能」「削減・廃止を検討すべき」「人間が担うべき」の3つに
分類・整理してください。

【業務リスト】
[採用担当の日常業務を箇条書きで貼り付ける]

出力形式:
- AI・自動化で代替可能な業務(具体的なツール例も添えて)
- 削減・廃止を検討すべき業務(理由も記載)
- 人間が担うべき業務(なぜ人間が必要かを明示)
- 今すぐ取り組める改善アクション3つ

ポイント: 自分の業務リストをそのまま貼り付けるだけでAIが仕分けしてくれる。「棚卸しをしたいけどどこから手をつければいいかわからない」という状態からの最初の一歩に最適。kubellの「すてるば」プロジェクトの個人版として活用できる。


編集後記

「HRは間違ったエネルギーだった」という言葉が今週一番印象に残っています。極端な意見ではありますが、「HR部門が存在することで安心している」という状態と「HR部門が価値を出している」という状態は、似て非なるものだと思います。今週のkubell事例が示すように、何を捨てて何に集中するかを選んだ組織が、AI時代に強い。採用担当者も同じ問いの前に立っています。


出典

  1. HR Tech Feed | 'HR is the wrong energy': Bolt CEO defends eliminating the entire department | https://hrtechfeed.com/hr-is-the-wrong-energy-bolt-ceo-defends-eliminating-the-entire-department/

  2. HR Tech Feed | Prem Kumar, CEO of Humanly(Humanly $25M Series B) | https://hrtechfeed.com/prem-kumar-ceo-of-humanly/

  3. HR Tech Feed | What Is Quality of Hire? Definition, Metrics, and How to Measure It | https://hrtechfeed.com/what-is-quality-of-hire-definition-metrics-and-how-to-measure-it/

  4. Recruiting Brainfood | Issue 502 | https://recruitingbrainfood.substack.com/p/recruiting-brainfood-issue-502

  5. HR NOTE / kubell | AI導入の前に「捨てる」勇気を。月3,000時間の業務削減を実現したkubellの全社プロジェクトの全貌 | https://hrnote.jp/contents/soshiki-kubell-suteruba-20260522/

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