第八章、船が出航停止する
翔太は寝室に行ったりリビングへ降りてきたりを繰り返していた。
どうやらイライラするとタバコを吸う頻度が高くなり下で電話する機会も増えてきた。
その度に翔太は私や子供にテーブルを叩いてジェスチャーや小声で指示をしてくる。
「テレビを消せ」
「喋るな」
「犬がうるさい」
私たちは身を潜めるように静かにして、私は録音を続けていた。
少し前に翔太とはるかの件で探偵さんと知り合う機会があり、『LINE』のカメラや動画は撮ったりする時に音が鳴らないことを教えてもらった。
なので目の前で電話されても携帯をイジっているふりをして動画や写真を撮ることが出来たのだ。撮れたものは協力者二人に送信それがこの時の日課だった。
真理奈からメールが来た。
「小野寺先生と連絡が取れて今から事務所へ行ってくる。」とのことだった。
真理奈自身も翔太の元被害者であり、裁判にまで発展したからその資料も全て持って行くと。
「ありがとう。お願いします。こっちは電話してるから録音撮るね!」
と返したら翔太が目の前で電話を始めた。
「あなたのせいでこっちまで被害来ちゃったんで旦那さんに被害届を取り下げること、会社の顧問弁護士の解任が必要です。このままいくと嫌な方向へ行ってしまいます。俺近いうち直接話しに行きますよ。他の口座まで凍結されたんじゃたまったもんじゃない。とにかく俺の名前は絶対に出さないで言わないでください。現金は自分が持ってると通してください。いいですね。余計なことは絶対に言わないで、間違っても俺に渡したとかは言わないこと。とりあえず旦那さんが戻ってきたらまた電話ください。俺が上手く話しますから。」
「ふざけんなよ。俺の名前絶対出すなよな。」
きっと相手の女性は翔太の洗脳が濃くかかっていて言いなりになってしまっているんだろう。
私が話したところでこの洗脳は解けず、もっと濃い洗脳をかけるに決まっている。
真理奈がここであの弁護士の先生と繋がってさえくれればと心の中で祈った。
真理奈からメールが来た。
「今小野寺先生と話してる。口座凍結してあるって言ってる。ある会社のお金を奥さんの口座へ入れてそこから翔太の口座に送金したみたい。だから翔太の受け取った口座は凍結されたんだよ。うちらの今の話も全て理解してくれたよ。美咲の存在も何も言わないって言ってくれてた。私に送ってくれたやつ小野寺先生に送ってもいい?」
「私たちのことが翔太にバレなければ全部送ってもらっていいよ。翔太相当怒ってる。理解してくれる先生でよかった。」
「分かった。今のも送って見せちゃうね。」
ここで大きい味方が現れた。
やっぱり流れは変わっている⋯目に見えて分かるものだ。
今までの翔太のやりたい放題だった時代にストップがかかってきたのだ。
その翌日銀行側から翔太へ口座凍結の書類が届いた。
一社だけでなく二社凍結されたようだった。
メインで使っていた銀行二社の口座凍結により使えなくなり翔太の怒りはますますピークを迎える。
そして今度は全然使ってなかった口座を使い始めたのだ。
たまたま翔太がリビングへ来たので、寝室の換気をしようと入ったら翔太の枕を踏んでしまった。
「あれ?」
枕の下に硬いものがあることに気が付いた。
見たこともない携帯電話が置いてあった。
子どもたちに話すと知らなかったみたいだ。
これもまたロック解錠が必要なのか⋯。
数日後の深夜、寝ようとしている私の横で堂々ともう一台の携帯を使い始めたのだ。
翔太は私が寝ていると錯覚していたようで目を半開きにしロック解除のパターンを入手した。
そこには画像や色んな人との通話履歴色んなものが残っているようだった。
「タイミングを見て撮らなきゃ!」
私は心の中が弾んだ。
この頃の私は一つでも多く撮りなきゃと言う勝手な責任を感じとてもシビアになっていた。
いつも使っている携帯に着信が入って使っていた携帯は寝室に放り投げ一階へ行った。
階段を下りた音がしたその瞬間あれもこれもと写メを撮り、この機種の電話番号も控えた。
撮り終わり階段の踊り場で電話の内容を聞いていた。
キャバ嬢との電話だったようでとても楽しそうに大笑いしながら話をしていた。
この会話は必要なのか分からなかったが一応残した。
そろそろ切れそうだなと思った私は静かに上へ駆け上がり布団の中へ入った。
翔太は洗面所の方へ行き、お風呂に入りに行った。
その隙に下へ行き携帯をチェックし撮れるものは撮って保存。
私の指紋を拭き取り二階へ戻った。
翔太はそのまま用意し寝室の携帯を取りに来て静かに出かけた。
キャバクラへ呼ばれたんだろうと思った。
撮ることが精一杯で確認するのは後にしていた為、翔太が出かけたあと私は撮ったものを確認していた。
もしかしたらまた違うターゲットがいるのかもしれない。
私の心の中はそんな風に予感させた。
なぜならば見知らぬ名前の人物とのやり取りが多かったからだ。
そうなると必ず翔太は違う言い方をして私に言ってくるはずだと確信があった。
明日辺りもしかしたら言ってくるかもしれない。
そう思いながら朝方眠った。
翌朝私の予感は見事に的中する。
朝7時私がリビングにいると、翔太が帰宅してきた。
「ママ!ちょっといい?」
呼ばれてキッチンへ向かうと翔太は自分の携帯の保存してある画像たちを私に見せてきた。
「俺ね土地をもらうことになったんだよ。これ土地の書類物とくれる人のマイナンバーカードとパスポートと遺言状。」
とんでもない数の土地が載っているものだった。
「よく見えないなぁ。」
「じゃあママには送ってあげるね!誰にも言うなよ。」
そっくりそのまま転送してもらった。
「このおじいさんが入院してて今から神奈川に行ってくる。亡くなっちゃったら口座のお金銀行に取られちゃうからもったいない。この孫が俺の知り合いでさ。色々相談乗ってあげてるんだよ。あのこの息子さんも俺のこと気に入ってくれてて。もうおじいさん長くないから。」
私は遺言書のところに目が止まり文面を読み涙が出た。
「は?バカじゃねーの?何でお前が泣いてんの?」
「あんた絶対これ取らないでよね。あんたがもらうところなんて一ミリもないんだから。」
「国税から守ってあげるだけだよ。報酬として少しだけもらうけど、それは向こうからの意向だから。やべ!もう行かなきゃ。神奈川行ってくる。」
時間になったらしく慌てて出かけていった。
「この詳細は絶対やばい!どうしよう。どうにかしないとあいつが取るに決まってる!」
私もパニックになりながら真理奈と留美子さんに転送し全て取られてしまうとメールで伝えた。
私も管轄の警察に連絡をしたが、鼻で笑われて奥さんが口出しするところなんかないと切られた。
遺言書の中にこんな言葉が入っていた。
「皆が仲良く、そして末永く幸せな人生を送ってくれることを心から願っています。」
こんなに苦しい気持ち、どうしたらいいんだろう。
でも新たに出てきたばかりの人で一体誰のことを話しているのかいまいち分からなくてどうにもできなかった。
留美子さんと真理奈にも手分けして警察に話しに行ってもらったがやはり相手になんてしてもらえなかった。
何度もあっちこっちに話してみたが、取り次いでくれることはなかった。
こうなったら神頼みだと思い、近所の神社へ子供たちを連れ何度も足を運んだ。
そんな時真理奈から電話が来た。
「翔太結局行っちゃったんでしょ?本当にあくどい奴。今小野寺先生から電話が来て〇〇警察署の刑事さんが私と美咲と直接会って話を聞きたいのと、証拠が欲しいって言ってるみたいでどこかで来れませんか?って。美咲来れそう?どこかで待ち合わせして行ってもいいし、翔太の目もあるだろうから。」
「来週の月曜日なら平気かもしれない。キャバクラ関係者の店長とかキャバ嬢たちとテーマパーク行くって言ってたから。そこに運転手として山中も一緒に行くみたい。この前山中とこっそり洗面所で話してるの聞いたんだよね。朝早めがいいんだけど真理奈は時間とか曜日大丈夫?」
「わかった!こっちは平気!聞いてみるね!」
これがきっかけとなり、大きく物事はこちら側に流れを向けてくれることになる。
翔太の悪事が世間に知らされる数ヶ月前の話だ。
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アーク・ザ・エンプレスの八章をまとめました☺️✨ サスペンス型ノンフィクション小説になります!! 翔太の悪事が世に知られるまであと少し⋯。 …
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