第五章3
そのまま翔太はどこかへまた出ていったようだった。
(誰と電話してたんだろう⋯?
今は返せないってことはお金ってことだよね?)
子どもたちを送り出ししばらくすると翔太が帰ってきた。
とても機嫌が悪いようだった。
特に話すこともなく、寝室へ行った。
また2階でも怒鳴って電話している様子が分かった。
何か撮ろうと思ったが階段の踊り場のところではよく聞き取れなかったので諦めた。
夕方子供の迎えに行きながら、買い物をして帰宅した。
また怒鳴って喧嘩している電話をしているようだった。
「ずっとあいつ怒ってるけど何事かね?返せないって言ってるからお金関係だよね。」
莉子がコソッと言ってきた。
「私もそう思った。なんか昼間も電話してたから録音撮ろうと思ったら多分毛布被って電話してるみたいだから聞き取れなくて辞めちゃった。」
「あいつが逆ギレしてるんだろうから何か向こうはアクション起こしてくるんじゃない?誰だか分かんないけど。」
すると知らない番号から私の携帯に電話が入った。
「もしもし。」
「あ。美咲ちゃん?突然ごめんね。分かる?昌次だけど。」
翔太の弟の昌次(しょうじ)さんだった。
すると慌てて降りてきた翔太。
私が電話しているのを見て切れとジェスチャーしてきた。
「実はさ俺翔太に金貸してるんだよ。それで最近ずっと返してくれって言ってるんだけどなんか色々言い訳つけて返してくれなくってさ。翔太に美咲ちゃんには言うなって口止めされてたから言えなくてさ。巻き込みたくなかったんだけどこっちもどうしていいか分かんなくて電話しちゃったんだよね。ごめんね。」
「え。そうなんですか。お金のことは全然知りませんでした。いくらなんですか?」
「ざっくり2000万ぐらいかな?こっちは大変なんだよ。火の車だよ。信用して貸したのに実の弟にも騙して嘘言うもんかね?あいつやべーよ。」
「そんな高額⋯。ちょっとまた後で電話してもいいですか?すみません。」
一旦電話を切り翔太に切り出した。
「どういうこと?それで朝から電話してたわけ?」
翔太は面倒くさそうに貧乏揺すりをしながら答えた。
「俺もう少し待ってって言ってんのに待ってくれなくて。お前にも言うなって言ったんだよ。それなのに向こうが暴走して勝手に。腹立つ。」
「そんな大金暴走するよね?向こうだって家庭あるんだよ?なんでそんなことしたの?早く返しなよ。」
「だーかーらー!今はそのお金動かせないの。春にならないと無理なの。俺の付いてる税理士がそう言ってんの。」
この時期嘘がすごかった。
税理士なんて職場に付いてるのは分かるが、個人的に付いてるなんて聞いたこともなかった。
全て春になると返せると言って逃げていた。
その春ならという根拠がないからみんな怒るんだろう。
そして取った金額が段々と何百万から何千万に変わってきていた。
後々昌次さんから過去の翔太や地元での素行を聞かせてもらった。
お互いが警戒しながら、簡単に信用出来ない状況から少しずつ私の中で信じられると思い、私の見た真実を話していった。
翔太の性格をよく分かっている昌次さんは、私の状況や子どもたちの状況も全て理解してくれた。
とても心強い味方が出来たのだ。
それでも昌次さんは翔太に電話をし怒っていた。
「いつまで待たせんの?いい加減にしろよ。こっちが貸してる側なのに何でお前の言うことを聞かなきゃなんねーの?俺の会社の税理士もうるさいから返してくれよ。おい。翔太。」
それに対しても翔太は逆ギレの嵐だった。
「お前しつこい。今は返せないものは返せない。動かせないものは動かせないの。俺の顧問弁護士もダメって言ってるし。マネーローンダリングとかも疑われるからやめたほうがいいとかも言われてんの。もう少し待っててくれって言ってんの。」
「話になんねーから家行くわ。」
それを聞いた翔太は慌てて私に寝室にいるから家には上げるなと言って逃げた。
もうこいつ内容証明のお金も足したら億行くんじゃないかと思い始めた。
やはり取っている金額が年々増えてきている。
もう桁違いな金額だった。
何時間かして翔太の後輩の山中が来た。
この山中と言う男は翔太のパシリというか、何でも言うことを聞いている後輩だった。
翔太の職場で働いている子で完全に翔太側の人間。何でも翔太にチクる人だ。
と同時に昌次さんが上がってきたような気がした。
素早く2階に上がっていったような⋯。
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