キスが出来なくて

#創作大賞2025
に応募する記事です。本当に拙い文章ですが、一生懸命に面白いと思ったものを書いてみたので楽しんでいただけると幸いです。

「コトブキ君、この前行ったハンバーガー屋さん美味しかったね」

「僕何回か行ってて好きだったから先輩にも気に入ってもらえて嬉しいです」

鰻川トウコさん。俺が所属するダガガ岡高校美術部の1つ上の先輩で…

「今度はもうちょっとおしゃれしてデート行きたいなあ」

「今でも十分おしゃれで可愛いですよ」

俺の彼女だ。

「やだ、そんな事言わないでよ」

「言いますよ、彼女なんだから」

「付き合う前は素直じゃなかったのに」

「恥ずかしくても伝えたいじゃないですか」

自分の気持ちを伝えるのは恥ずかしいけど、先輩には笑顔になって欲しいから頑張って言ってみる。

現在、6時30分。美術部も終わりこの部室には俺と先輩しかいない。季節は秋。風が涼しい。

…今ならキスできるだろうか。

「先輩…キス、したいです」

「そ…それはダメ!」

えっ?まあ仕方ない。何より彼女を優先だ。謝ろう。

「ごめんなさい、先輩。ちょっと俺調子に乗ってちゃってて、」

「違うの!私、緊張すると…」

その瞬間。先輩の口から!

「あが… あ…」

得体の知れない黄色い化け物が先輩の口の中から現れた!

「先輩…先輩!」

何とかしようとすると、waitのサインを出して俺に行動をしないように引き止める。

少しすると黄色い化け物は先輩の口の中へ入っていき先輩は元に戻った。

「ん、ごめん…もう、大丈夫だから」

「ほ、本当に大丈夫なんですか?」

「うん… 話、聞いてくれるかな」

「はい」

「2週間くらい前のデートの時に水族館に行ったじゃない?あの時、ウツボがいたじゃない」

「ウツボはあんまり記憶にないですけど…たしかいたと思います」

「ごつごつした岩に穴が空いてて、そこに黄色くて大きくて牙の鋭いウツボがいて」

「そんな感じでしたね」

「そこの岩がね?口を開けた人間のように見えて…だからこう思ったの。『体内でウツボを飼ってそれが口から出ていたとしても、正しいんじゃないか』って」

体内でウツボを飼っている。

体内でウツボを飼っている…

こういうところに惚れてしまったのだ。彼女はこの学校でただ1人、口の中にウツボを入れることを考えていたのだ。その事実が俺の胸の鼓動を加速させる。

「色々聞きたいところがあるだろうから先に説明しちゃうね。まず、ウツボをどこで手に入れたか。ネットで出会った友達にたまたまウツボ漁師の方がいてね。その人にお願いして生きたままウツボを貰えちゃった」

「あと、何故ウツボを私の体内で生活できていて、何故私はウツボが体内にいるのに死んでいないのか。これは現代の科学技術で説明することはできないの。ごめんね」

「あとドキドキするとウツボが出てくる理由ってのも…」

「それも現代の科学じゃ分からないわ」

ウツボを体内で飼うという概念を思いついた事がなかった俺は先輩の見えない思考にどんどん魅了されていく。しかし、一つ問題がある。

「キス、出来ないですね」

「ドキドキしちゃうからね… 他の行為だったら腕とか首に巻いてなんとかできるんだけど口と口が触れ合うキスじゃ、ウツボがどうしても邪魔だから…」

「キス、したいです」

「コトブキ君…?」

「何度も言ってるけど改めて言います。鰻川トウコさん、私はあなたのことが大好きです。今はキスする事が出来なくとも、いつかあなたとキスできるように俺が何とかしてみせますから」

「コトブキ君…あがっ…あっ…」

やはり口からウツボが出てきている。ウツボ吐きモードの先輩は特にアヘ顔をする訳でもなく、美しい顔をしている。その美しさに目を奪われていた…のだが!

「うわっ危ねえ!」

ウツボは人を噛むのだ!毒はないがただただめちゃくちゃ痛いらしい。強い好意を伝えるだけでもかなりの覚悟がいるらしい…

「じゃあね」

コンビニのある交差点でいつも別れて帰る。ここから家までの間が少し寂しい。キスがしたい。どうやったら出来るだろうか。その方法を考えることで寂しさを紛わしていた。

翌日、午後7時ごろ。

「じゃあ、今日もお疲れ様」

「先輩!その前に一つだけいいですか?」

「どうしたの?」

その瞬間、俺は先輩の唇に口をつけた!

「!?」

俺が考えたのはこうだ。先輩はドキドキしてからウツボが発生する。だからキスすると言ったらドキドキしてウツボが出てしまう。だから宣言無しのキスをする事で、ウツボを出さずに唇を奪う事ができるのだ!Fantastic!しかし…

「あがっ…」

問題はここからである。キス出来たのはいいが、先輩はドキドキしてしまう。結局ウツボは口から出てきてしまう。ウツボを体内で飼う先輩は好きだが、ウツボ自体は死すべきだ。恋路を邪魔する肉食魚など死ねばいい。

「俺と先輩のキスの邪魔をするな!クソッタレがああああああ!!!!!!」

ウツボがこちらを向いて大きな口を開けた。瞬時に避ける。ウツボはまだ俺の方を向いている。殺すつもりか?良いだろう。あいにく今の俺に武器はない。だが俺もお前のように、ステゴロからでもお前を殺せるのだ。

歯噛み歯噛み歯噛み

ウツボの首元

歯噛み歯噛み歯噛み

死ねッ!!!!!雑魚が!!!!!


手紙

十六の君へ

お元気ですか?私は元気です。あの時あなたはウツボとの本気の殺し合いに勝ちましたね。

あの後、鰻川先輩は「ありがとう」と言ってくれてより距離も縮みました。

鰻川先輩、いや、トウコとは結婚しました。現在では2児のパパです。

トウコは画家として世界に名を轟かせています。

全部嘘です。

まだあれから1日しか経ってません。

歯が痛いです。

十六の俺です。

ウツボには勝ちました。でも、ウツボを殺したことを鰻川先輩に怒られて若干仲が悪いです。

どうすればいいんだ…

どうすればいいんだ…

俺は先輩のことが大好きだ。だから何とかして仲を取り戻したい。でも、どうすれば…

十六の俺より

yahoo知恵袋
ベストアンサー
ウツボ さん
死ね




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