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星の砂を君に 第2話 忘れられない絆 テーマパーク愛の約束


星の砂を君に

第2話 忘れられない絆 テーマパーク愛の約束

                       

「いつも喫茶店だね。会うの」

彼がコーヒーカップを置きながら言った。

窓の外には柔らかな午後の日差し。

私たちは、いつもの席に向かい合って座っていた。

「そうだね」

私は笑いながら答えた。

すると彼は少しだけ視線を逸らした。

「今度、違うところで会ってみない?」

その言葉に胸が小さく揺れた。

デートのお誘いだった。

少し前に、彼から星の砂をもらったことがある。

小さな瓶の中で輝く星たち。

その時から、私は少しだけ彼が気になっていた。

もちろん嫌いじゃない。

むしろ一緒にいると心地良い。

でも、この時はまだ軽い気持ちだった。

「ええ。いいですよ」

そう答えると、彼は嬉しそうに笑った。

「じゃあ日曜日。九時に駅前で」

そこまでは良かった。

「場所は?」

私が尋ねる。

彼は真面目な顔で少し考えた。

そして言った。

「どこにする?」

思わず吹き出してしまった。

「決めてないの?」

二人で顔を見合わせて笑った。

「遊園地とか、水族館とか?」

「いいね」

彼はすぐ頷いた。

「じゃあ決まり」

「え?」

「両方あるところ」

「ああぁ〜、うんうん」

また二人で笑った。

不思議な人だった。

だけど、そういうところに興味がわいてきた。

両方ともって、その思考が好きだった。

一緒に考える。

一緒に決める。

彼はいつも私を対等に見てくれているようだった。

そんなところに惹かれていたのかもしれない。

そして迎えた日曜日。

駅前に着くと、彼はすでに待っていた。

少し緊張したような顔。

たぶん私も同じ顔をしていたと思う。

「おはよう」

「おはよう」

それだけなのに、なんだか照れくさい。

二人で電車に乗り、目的地へ向かった。

「そういえば」

 入場ゲートへ向かう途中、彼が立ち止まった。

「僕たち、名前も知らないですよね」

思わず笑ってしまった。

本当だった。

何度も会っている。

星の砂までもらっている。

それなのに名前を聞いていなかった。

「今さらですね」

「今さらです」

二人で笑う。

先に彼が名乗った。

「大城俊明です」

柔らかな声だった。

「大城さん」

口に出してみる。

少し照れくさい。

「あなたは?」

私は自分の名前を告げた。

彼は一度頷き、その名前を大切に確かめるように繰り返した。

「柏倉瞳」

その瞬間、不思議な気持ちになった。

今までより少しだけ近づいた気がした。

まずは水族館だった。

大きな水槽の中を泳ぐ魚たち。

ゆらゆら揺れるクラゲ。

光の中を舞うように泳ぐエイ。

私が立ち止まるたびに、彼も立ち止まる。

私が綺麗だと言うと、彼も頷く。

それが嬉しかった。

イルカショーでは、子どものように一緒になって拍手した。

高く跳び上がるイルカ。

きらめく水しぶき。

笑い声。

ちょっと濡れた彼の服。

気がつけば、私はずっと笑っていた。

イルカショー


初めてのデート

昼食は海が見えるレストランで食べた。

2人で、地中海パスタを選んだ。

海老が美味しそうだった。

「地中海料理って身体に良いらしいよ」

「地元にも、美味しい地中海料理のお店があってそこのパスタが美味しいんだよ。このお店。」

大城さんは、スマホを私に見せてくれた。

「美味しそう。」

たわいもない話ばかりだった。

好きな食べ物。

子どもの頃の話。

仕事の話。

それなのに時間はあっという間に過ぎていった。

午後は遊園地へ向かった。

絶叫系は苦手な私。

彼も無理はしないタイプだった。

だから二人でゆっくり園内を歩いた。

笑って。

話して。

また笑って。

不思議だった。

何をしていても楽しい。

それだけで十分だった。

園内を歩いていると、大きな観覧車が目に入った。

「乗る?」

彼が聞く。

「うん」

少しだけ緊張しながら頷いた。

ゆっくりと上昇するゴンドラ。

最初は景色の話をしていた。

海が綺麗だとか。

遠くまで見えるだとか。

だけど高くなるにつれて、なぜか会話が少なくなった。

ふとゴンドラが揺れた。

「あっ」

身体が少し傾く。

その瞬間、彼の肩に触れた。

思ったより近かった。

慌てて離れようとしたけれど、胸がどきどきしていた。

「大丈夫?」

彼が笑う。

「う、うん」

顔が熱い。

窓の外を見るふりをした。

だけど景色よりも隣にいる彼の存在ばかり気になっていた。

観覧車を降りると甘い香りが漂ってきた。

ポップコーンだった。

「キャラメル味と、いちご味がある」

私が言うと、

彼は少し考えてから笑った。

「柏倉さん。どっちにする?」

「うーん……」

迷っていると、

「じゃあ両方」

即答だった。

思わず笑う。

「また両方?」

「だって気になるじゃん」

らしいなと思った。

結局、二つ買った。

しばらく歩きながら食べる。

「いちご味どう?」

彼が差し出してくる。

私は一粒もらった。

「あ、美味しい」

「キャラメルも食べる?」

今度は私が差し出した。

同じ袋からポップコーンをつまむ彼。

なんでもないことなのに、妙に照れくさい。

だけど嬉しかった。

「ねぇ。普通さぁ。女性が苺味で、男性がキャラメル味とかじゃないの?」

「俺、どっちも好きだけど」

2人は笑い合った。

こんな時間が、ずっと続けばいいのにと思った。

帰る前にショップへ立ち寄った。

ぬいぐるみや雑貨が並ぶ店内。

その片隅にアクセサリーコーナーがあった。

「綺麗」

私が手に取ったのは、小さなジルコニアのリングだった。

本物の宝石ではない。

だけど光を受けてきらきらと輝いていた。

彼も覗き込む。

「似合うよ」

そう言われて少し照れた。

私は笑った。

「本物みたい」

すると彼は少し考えてから言った。

「でも綺麗だよ。いつか本物を」

その言葉が妙に嬉しかった。

結局、そのリングを記念に買って貰った。

高価なものではない。

けれど私たちにとっては特別な一日を閉じ込めた宝物になった。

お会計をしていると、レジの上の天上からモービルがぶら下がっていた。

「これ、下さい。」

私は、キラキラ輝くイルカのモービルを買った。

帰り道。

夕暮れが街をオレンジ色に染めていた。

駅へ向かう人の流れ。

少しずつ近づく別れの時間。

もっと一緒にいたい。

そんな気持ちが胸の奥で静かに膨らんでいた。

駅前に着く。

「今日は楽しかった」

私が言う。

「うん。俺も」

彼が答える。

沈黙が落ちた。

帰りたくない。

そんな空気が二人の間に流れていた。

ふと彼が私を見た。

優しい目だった。

その瞳を見た瞬間、胸が高鳴る。

次の瞬間。

彼はそっと私に近づいた。

私も逃げなかった。

柔らかな夕暮れの中。

初めてのキスだった。

ほんの一瞬。

だけど時間が止まったように感じた。

離れたあと、二人とも少し照れて笑った。

「また会おうね」

「うん」

私は頷いた。

だけど、足はなぜか動かなかった。

帰りたくない。

たった一日なのに、不思議だった。

すると彼が小さく笑った。

「俺だけかな」

「え?」

「また、すぐ会いたいって思ったの」

その言葉で胸が大きく揺れた。

「これ」

私は小さな袋を差し出した。

「え?」

「お返し」

中には、さっき買ったイルカのモービルが入っていた。

彼は、少し驚いて嬉しそうに笑った。

その時にはもう分かっていた。

軽い気持ちから始まった。

この人の思考に興味があった。

気がつけば私は彼のことを好きになっていた。

駅へ向かう彼の背中を見送りながら、そっと指輪に触れる。

小さなジルコニアが夕日に輝いていた。

まるで私たちの未来を祝福するように。


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