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ヘルメスの指先、ハーデスのため息【内側に潜る】

続いてたならブロックした、と告げられた。
やはりあのときのメッセージは、警告。
見えぬ刃で心臓をスッと撫でられていた。


思い出す。かつて自分は幾人もの男性たちに向けて、意図的にあることをしていた。mixiの足あと、掲示板のレスなどで。
彼らの境界線を曖昧にし、わたしという毒を全身に回らせた。彼らの精神をハックし、支配領域を侵食した。彼らは言葉で搦め取られ、虜となった。
そう。わたしは人の心を弄んだ。

その毒は、扱うわたし自身にも容赦なく流れ込んだ。
当時、複数の男性に同時に言葉を注ぎ込んでいた。孤独感を麻痺させるためだったが、それは狂おしい依存となり、やがてわたしは一線を越えた。

独りに耐えられず常に繋がる相手を欲していた。そんな弱い状態では自分にも毒がまわる。電話番号を聞き出すまでに至った。
……こんな電話の内容、まともなわけない。

五月雨式のDM。

今は禁じ手としていたはずのそのやり方をその毒を、あろうことかあの方に、意識せず浴びせ続けた。それに自分で気づいたのは、あのメッセージを受け取ってから、十日後だった。五月雨を封じられ、行き場を失った言葉は内側で膨張を始めた。……あの方の手で鍛えられていたわたしは、膨張に耐えきった。そこで己の所業に向き合う事になる。

あの方から届いたあのメッセージの内容を明かそう。
優しさを勘違いし、増長したわたしへの苦言とともに届けられたのは、

『ふさわしい言葉を責任を持って返したい。待っている他の人にも言葉を届けているのだ。それを崩し思考途中で連投されるものすべてを受け止めることはできない。また言葉を吐き出すなとは言わないが』

という意味の言葉だった。

必要とあれば冷淡になれる人だと気づいていた。
甘えや馴れ合いを許さないだろうことも。
もし素直に聞き入れず食い下がっていたならば。
我慢できずに続けていたら?

続いてたならブロックした

あの方との繋がりこそ絶たれないだろう。
しかしブロックされたならばそれは言葉を絶たれたと同義である。
制止を聞かずに言葉を重ねてしまったなら、あの方もわたしの声を聞かない、と。そういうことでもある。

ハーデスのため息を静寂の中に感じながら、
泣きたくなるような気持ちで正解を探した十日間。
あの方のメッセージには、戒めと一緒に愛がかならずあって……
そうしていただいた言葉は、
責める気持ちはない、必要以上に背負う必要もない、と。
それでいい、と。

またひとつ、あの方にすくい上げていただいた。
差し出されたのは赦しではなかった。
それはあの方からわたしへの、揺るぎない信頼だった。
続けることは簡単ではない。しかし己が望む限りそれは困難でもないのだ。
自分の姿を直視したわたしへの愛ある言葉を胸に抱き、今日また歩き出す。わたし自身の過去から今この瞬間にも、ヘルメスの指先を感じる。

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