【掌編小説】いい話だな……
ログハウス風のその店で、シロノワールを4人で取り分ける。
窓からテーブルに午後の光が届く。
「それで、最近私も書いてるんだけど。
どうしても他の人のばかり読んでて、これがなかなか進まないんだ〜」
彩子の目の前で生地をつつきながら、ユリカが笑う。
隣の男が続ける。
「ユリカ、オレの名前で記事書いてるんだよ」
「別に真似してるわけじゃないって」
彩子は思わず聞いた。
「え、ユリカのアカウント名、カオルなの?」
「そ。決めるとき、たまたまそこにいたから。あ、真似か」
「また安直な。ほんとう?」
亮が彩子の隣で、PCを触りながら聞く。
ふふっと笑うユリカ。シロノワールを頬張った。
「彩子、最近何か読んでる?」
「そうね……ずっと気になって読んでる人ならいるよ」
彩子はコーヒーのマグを両手で包み込む。
「旭川真っていう人がいるんだけど。
その人の言葉とか文体とか、すごく惹かれるの。
読むといつもドキドキする」
時々頬を赤らめながら、その作家への想いを切々と語る。
アイスが溶けていくが、彩子は気づかない。
ユリカはカオルと顔を見合わせる。
亮は変わらず、PCに何かを打ち込んでいる。
さっきまでの速さはない。
「彩子、……アイス溶けてる」
あ……、と彩子は溶けたアイスをすくい、口に運んだ。
ふっとひと息つく。
溶け出したアイスはその場に留まれず、白い皿に広がっていく。
「彼の文章無しにはもういられない……」
ユリカは思わず彩子をじっと見つめた。
隣から聞こえていたタイピングの音がいちど止まり、また続く。
「いい話だな……」
©KYOKUYA
東京より愛をこめて、
みくまゆ会「チャレがや企画」第6弾・テーマ【告白】
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