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【掌編小説】靴屋さんの人

「足をまっすぐに乗せておいてくださいね」
美沙は言われるがまま、紺色の板に足を置く。シューフィッターが巻き尺をあてる。縦、横、ぐるりと一周。彼の手が滑らかに足をたどる。
「ここ、あたって痛いですか」
「ええ、少し」
板の重なりをパタンと返して、彼は続ける。
「足裏全体に体重が乗って……」
声を聞きながら美沙は息を吐き、肩の力を抜いてみる。
シューフィッターの手の動きをぼんやり視線で追う。温かな陽射しがまぶしく、美沙は目を細めた。


……痛、い。
漏れた声が、遠く感じられた。


慣れないパンプスの食い込みの跡。美沙の擦れたアキレス腱に、ひりひりと空気が沁みる。ウェイトレスが、あんなにもハードだなんて思わなかった。

「パンプスは支給されるのですか」
「ええ、皆さん指定のものを履いてます。だけど私の足には全然合わなくて」
「もし支障ないのでしたら、パンプスいちどここへ、持ってきてください。多少の調整ならできるかもしれません」
「え、いいんですか?」
「今日お買い上げいただければ、お直しサービスしますよ」
インソールの調整が終わったようだ。彼はいつの間にか仕上げのブラシをかけている。

「美沙さん、どうぞ」
靴が差し出される。
「履いて、その辺歩いてみてください。緩かったらまだ直せますので」
桜色のスウェードが美沙の白い肌に映える。甲のベルトを留め、美沙は立ち上がった。
「あ、良さそうよ」
店内を歩いて、履き心地を確かめる。


「ありがとうございました」
美沙は新しい靴を手に、店を出る。
外は、肌寒い。
ひやりとした風が首筋をなぞっていく。


「またのお越しを、お待ちしております」
無機質な声が響く。
そこにはピン留めされた美沙の記録があった。
痛みの箇所。重心の癖。
涙の跡。

真新しいインクの文字はそれらを写し取る。











読んでいただきありがとうございます。
この作品は Saka. 先生 のメンバーシップ企画で書かせていただきました!

「クラスメイトとのnote交換日記」
第1走者の Rueさん からバトンを受け取りました。
小学校6年役員になり、謝恩会で上映するMovieを作成したときのお話をしてくださいました。記事はこちら。

わたしも読みながら、清々しい達成感、お祝いの嬉しさとすこしの心地よい疲労感と、体験させていただきました!

はい、続く第3走者は…
Saka.先生 です!

このリレーの順番が発表されたとき、これは面白いことができる……と思ったのは事実です(笑)
Saka.先生 、回収お願いいたします!
あとはお任せして、ぶん投げます(笑)

こちらの企画に参加させていただきました

さて。
逃げよう……


#クラスメイトとのnote交換日記

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