いつまでもずっとこうしていたい――世界でいちばん浴衣が似合う君. side B――
どうしよう、私やっぱり緊張してる。
浴衣、変じゃないかな?
お気に入りの水色の浴衣に、山吹色の帯。
帯と合わせた髪飾り。
似合ってないとか、ないよね?
今日は佐香くんと2人で花火大会に行くんだ。
男の子と2人で夜に会うの、初めてでドキドキする…!
* *
終業式間近のその日の昼休み、クラスメートの佐香くんが近づいてきた。
いつも私に話しかけては、ノートを借りていく。
そのおかげで私のノートは、誰が見てもカンペキといえるレベルになった。
……女子としてはやっぱり、男子に下手なノート貸せないからね。
「佐香くん、どうしたの? いつもより顔がこわばっている気がするけど」
いつもは軽口を叩いてくる彼の表情が硬い。
気になって聞いてみたんだけど、うーん、なにか変。
「あ、いや……。そんなことないよ。そういえば、ノート見せてくれてありがとう」
ちょっと待って、言ってることもおかしいかも。違う人になってる。
私の頭よりも上にある佐香くんの顔をじっと見た。
「なに、急に。いつもは当たり前かのようにノートを奪い取ってくるくせに」
「そうだっけ……? あ、えっと……。毎年、夏に花火大会あるじゃん」
「うん、あるね」
え、何を…。
「それってさ……咲月ちゃん、誰かと行くの?」
「それがさ、美空が行けなくなっちゃって。誰と行こうか悩み中なの」
……一緒に行きたい人はいるのだけど、言い出せない。
「え、そうなの? じゃあさ……俺と行くとかどうかな?」
「え?」
ドキッとした。今確かに、俺と行くのどう?って。
そんな、直球すぎる!
「あ、ごめん! なんでもない!」
佐香くん……待って、なんでもなくない。
「いいよ」
「え?」
あ、言っちゃった……!
* *
そんなわけで今日は、佐香くんと2人きりの花火大会デート。
デートって、言っていいんだよね、これ……。
何度も心のなかで想像してたけど、
現実になる日が来るなんて思ってなかった。
花火大会の会場に到着した。
始まりまではしばらく時間がある。
宵の明星・金星が桔梗色の空に輝く。
少し離れて、上弦の月。
この後の特別な時間を思わせる、幻想的な夕暮れ時。
浴衣を着た恋人たちがたくさんいて、それぞれの時間を楽しんでいる。
佐香くんと私も、カップルに見えるのかな。
背の高い佐香くんを見上げると、彼もこちらを見て微笑んでいた。
やっぱり、カッコいいな。
2人で唐揚げやらりんごあめやら食べながら、ふと気づくと、花火大会は始まっていた。
* *
花火の大きな音が、彼に聞こえてしまいそうな私の鼓動を隠す。
夜空に美しくひろがる花火に、そばにいるひとに、ただ、心を奪われて。
いよいよつよく煌めくその光に、
終わらないでと、すがりたくなった。
終わらないでほしいのは、
花火、それとも……。
拍手とともに、空は紺色に染まっていく。
「……花火、綺麗だったね」
「うん」
言葉にならない想いが、佐香くんから伝わってくる。
一緒かもしれない、そんな気がするんだ……。
「咲月ちゃん、今日は来てくれて本当にありがとう」
「こちらこそ、誘ってもらえて嬉しかったよ」
いつもの佐香くんであって、でもそうじゃない…
こんなにもまっすぐ、私を見てくれてる。
それに気づいてしまったなら。
もう、言わずにはいられなかった。
「……佐香くん」
「うん?」
「私、佐香くんとずっとこうしていたいかも」
この創作は、Saka. 先生の作品のサイドストーリー仕立てとなっています。
「世界でいちばん浴衣が似合う君」のヒロイン咲月側からの、同じ場面の再現です。
今回Saka. 先生に相談し、許可をいただけましたので、こちら投稿させていただきます。
Saka. 先生、快諾していただきありがとうございました!
今回の創作は、Saka. 先生のメンバーシップ限定企画「Saka. の教室で夏祭りをしよう!」への参加記事です!
[B]私だけの夏祭り(創作)での出店です!
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