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愛を感じて生きてゆきたい


21年前のあの日。

ふたり暮らしの2DKで、わたしは愛おしい歳下の婚約者に縋りついた。

わたしをみてくれなくていい。
2番目でいいから。
おねがいだから。
ずっといっしょにいてください。

彼の表情は覚えていない。滲んで見えなかった。

――君を愛さない男といるのはつらいことだよ。

それをあなたが言うのか。
わたしに最後を言わせるのか。

あなたを、愛してます。
もう……お別れなの?

――ごめんな。

その後どうしたのか、今も思い出せない。



小樽を離れ上京した彼は、わたしの世界――DJイベントに参入、東京に確かな基盤を作った。
わたしは彼のプロポーズを受け、多くの仲間に祝福された。
冬に彼と歩いた小樽の街を忘れられない。


新しい相手はイベントの女性客。
破局と新たな婚約。彼らの口に戸は立たず、それは瞬く間に界隈に広まった。

家庭的な彼女に対し、わたしは彼を癒せない。それどころか彼にプレッシャーをかける存在だった。
彼は心変わりし、わたしを捨てた翌週に新しい恋人との婚約を発表。理由はあったのだが、たった半年で式を挙げた。

イベント仲間も常連客も、彼と私との事を知っていた……立つ瀬がない。
しかしここで引くのはプライドが許さなかった。ここはわたしのフィールドなのに。
「何も悪いことしてないんだ。胸張ってやれ。俺たちがついてる」
仲間の支えもあり、イベントを続けた。
彼と相手の女性は、わたしと仲間の関わるイベントから距離を置いた。


彼から受けた仕打ちに心はぐちゃぐちゃになり、そこからわたしという人間は乱れていく。数年間、過食嘔吐も繰り返した。
自分の体を、自分自身を大切に扱えなかった。

いくつかの恋愛を経て、婚約者を失った傷はやがて癒えてゆく。

しかし傷はひとつではなかった。
あの日からずっと囚われていた……
「選ばれずに捨てられた」という消えない焼き印。心は膿を流し続けた。

結婚し子どもたちが生まれても、癒えないままだった。傷を心の底に押し込み、生きてきた。

 ♢ ♢ ♢


人生においては、古来から「7年周期」というものがあるらしい。
この別れから7年後、さらに7年後と、大きな転機があった。母となり、次世代を生きる子どもたちと真剣に向き合う自分に気づく。
続く7年後は、今年――。
この先の生き方が静かに、しかし決定的に変わった1年。

人生のガイドと呼ぶべき方に出会い、わたしは変わることができた。
その方から届けられた大切にしている言葉を、ここに引用させていただく。

「私が愛したことが、重荷になった」
これほど、魂を打ちのめす誤解って、そうないな。
でもそれは、君が悪かったんじゃない。
彼が受け止めきれなかっただけ。
そして“その受け止められなかった愛”が、逆流して自分を傷つける形になっていった──
それが過食嘔吐であり、自分を粗末に扱う一連の流れだったんじゃないか。
すごいなって思ったのは、ここをちゃんと「見つめて言葉にできた」こと。
そしてその体験こそ、再生の材料になる。
大丈夫――君はもう、ここまで来てる。

届けられた言葉より


21年経ち、この言葉でわたしは漸く解放された。
今はこうして静かに書くことができる。

最後に、今日これを書いて気づけたことを。

破局直後に出会い、いちばん酷いわたしを夫は目の前で見続けた。全て承知の上でわたしを選んだ夫は、わたしの愛をすべて受けとめる。どれだけ重かろうと身勝手だろうと。メンタル不調の時さえ、それは変わらなかった。

それがどれほどのことであるか。
今ほんとうの意味で、深く理解した。

もう、苦しくない。
ここにある、大いなる存在の愛を感じながら……
生きてゆく。

小樽運河




人生のガイド――兄貴へ。
執筆にあたり、メッセージ内容の引用を快く承諾していただいた事、心から感謝いたします。



今回また、音羽しーなさんに朗読していただきました!
是非皆さんに聴いていただきたい。しっとりと美しく叙情的なお声です。
わたしの心の内側、そのまま再現されています!
こちらからどうぞ!

しーなさんの作品紹介ページはこちらです!

この記事はことばとさん主催の
モノカキングダム2025への応募作品です。

#モノカキングダム2025


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