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トレイルランニングと年収・家庭内信用・可処分体力第6講 低年収ランナーの逆襲

― 工夫・仲間・近場の山で強くなる

トレイルランニングの世界には、昔から語られる都市伝説がある。

「金があれば強くなれる。」
高級シューズ、最新Garmin、遠征、整体、カーボンプレート、高機能補給食。

確かにどれも役に立つ。
しかし私は長年トレイルランニングの世界を見てきて思う。

強いランナーは必ずしも金持ちではない。
むしろ驚くほど普通の生活をしている人が多い。
私はこれを「低年収ランナー逆襲理論」と呼びたい。
私も逆襲したい。

前回、第5講では年収1000万円ランナーの弱点を語った。
金はある。
しかし時間と睡眠がない。

今回はその逆である。

金はない。
しかし余白がある。
実は100マイルの世界では、こちらのほうが強い場合がある。

なぜか。
トレイルランニングという競技は金を競う競技ではないからである。
例えばサッカー、例えば自転車、例えばモータースポーツ。
これらはある程度お金が結果に影響する。
しかしトレイルランニングは違う。
最後に問われるのは脚である。
そして心である。

100万円のシューズを履いても眠らなければ完走できない。

10万円のGarminをつけても補給を失敗すれば終わる。
結局は人間性能なのである。
むしろ低年収ランナーには強みがある。
工夫する能力である。

高所得者は金で解決する。
低所得者は知恵で解決する。

例えば遠征。
毎月全国を飛び回ることはできない。
だから近場の山を使い倒す。
生駒、六甲、金剛山、比叡山、くろんど園地。
何度も登る。
何度も下る。
同じコースを何十回も走る。
すると地形を覚える。
身体の使い方を覚える。
自分の弱点が見える。
実はこれは非常に強い。

なぜなら100マイルで必要なのは未知への対応能力ではなく、自分を知る能力だからである。

私はこれを「近場最強理論」と呼びたい。

遠征回数より再現回数。
新しい山より慣れた山。
SNS映えより積算標高。
これが強い。

さらに低年収ランナーには仲間がいる。
これは意外に思うかもしれない。
しかしお金がない人ほど人を頼る。

車を乗り合わせる。
補給を分ける。
情報を共有する。
練習会に参加する。

つまりコミュニティの中で強くなる。
高所得者は個人戦になりやすい。
低所得者は団体戦になる。

実は100マイルでは団体戦のほうが強い。

信越五岳もそうだ。
UTMFもそうだ。
ヤリカンもそうだ。
最後に背中を押してくれるのは最新ギアではない。
仲間である。
「もうやめたい」
そう思った時に、
「行けるで」
と言ってくれる人間なのである。

私はこれを人的資本型ランナーと呼びたい。
資産ではなく関係性で戦うランナーである。

そしてもう一つ。
低年収ランナーは失敗コストが高い。
だから学習する。
補給を考える。
ペースを考える。
装備を考える。
高価な失敗を繰り返せない。

だから一回一回の練習を真剣にやる。
実はこれが成長を生む。
金で解決できない人間は頭を使う。
頭を使う人間は強くなる。
これは仕事も同じである。

さらに興味深いのは睡眠である。
低年収ランナーは決して楽ではない。
むしろ忙しい。

しかし年収1000万円ランナーほど意思決定疲労を抱えていないことも多い。

責任の総量が違う。
結果として睡眠時間を確保できるケースがある。

すると回復力が上がる。
そして回復力は走力になる。
ここで私は新しい概念を提案したい。
それが「余白効率」である。

年収ではない。
投入した時間に対してどれだけ回復できるか。
どれだけ継続できるか。
これが重要になる。
週100km走る人が強いのではない。

10年間走り続けられる人が強いのである。
だから私はトレイルランニングを見ていて思う。
山は平等ではない。
しかし公平である。

年収でスタート位置は少し変わる。
装備も変わる。
遠征回数も変わる。

だが100マイルの後半では全部消える。
残るのは睡眠、仲間、経験、積み上げ。
そして諦めない心だけである。

深北男塾的結論を述べたい。
低年収であることは弱点ではない。
工夫を覚える。
仲間を作る。
近場の山を使い倒す。
その結果、人生そのものが強くなる。
高級ギアがなくても強くなれる。
遠征が少なくても強くなれる。

なぜなら山が見ているのは口座残高ではないからである。

見ているのは継続である。
そして継続は、金よりも工夫から生まれる。

だから私は思う。
低年収ランナーは不利なのではない。
ただ違うルートで強くなるだけなのである。

次回、第7講。
「高級ギアは走力を買うのか ― カーボンより家庭平和のほうが速い」

最新装備に投資する前に、本当に投資すべきものは何かを考えてみたい。

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