巡る因果の詩(うた)/コングラボード
「山姥が守った子」
深き森、苔むす庵の陰で、
白髪の老婆は、小さき命を抱きしめる。

世に蔑まれた鬼婆の腕は、
この夜、世界で最も優しいゆりかごとなった。
囲炉裏の火が、二人の横顔を照らす。
老婆の微笑みは、凍てついた心を溶かし、
静寂の中、眠る子の寝息だけが響く。
外では、一匹の狼が静かに見守っていた。
因果の糸は、ここから静かに紡がれ始める。
「鬼ヶ島に咲いた花」
時は流れ、場所は変わる。
荒波に囲まれた、禍々しき鬼ヶ島。
だが、その頂へ続く道は、今、
色とりどりの花々で埋め尽くされていた。

かつて鬼を育てた老婆の、無償の愛。
それが因果の種となり、
鬼の心に、この美しい風景を咲かせたのだ。
「やさしい心が 花を咲かせた。」
立て札の文字は、ただの伝説ではない。
岩場に座り、一輪の花を見つめる幼き赤鬼の、
その温かい眼差しこそが、真実。
「鶴が残した白い羽」
そして、因果は円環を閉じる。
夕暮れの陽光が、かやぶき屋根の家を包む。

かつて山姥に守られた子は、
今は、美しい娘へと成長していた。
「決して、中を見てはなりません」
その約束は破られ、正体を知られた鶴は、
黄金の空へ、最後の羽ばたきを見せる。
娘は、その姿を涙ながらに見送る。
足元に落ちた、一枚の白い羽。
それは、別れの悲しみではなく、
山姥から鬼へ、鬼から娘へ、そして鶴へ。
世代と種を超えて巡った、
「愛」という名の、確かな証(あかし)であった。
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