やさしい噓の結末
夕暮れが世界を琥珀色に染める刻、縁側に座るハルおばあちゃんは、孫のミチコに一匹のぬいぐるみを差し出しました。
「ミチコ、これをお持ち。これはね、森の神様から授かった『身代わりのウサギ』なのよ」
おばあちゃんは静かに微笑んで、続けました。
「おばあちゃんは明日から、神様のお手伝いをするために、少し遠いところへ旅に出るの。でもね、あなたがこの子を抱きしめるたびに、私はあなたのすぐ隣に、この金色の狐さんの姿を借りて戻ってくるわ。だから、寂しくなんてないのよ」
ミチコの背後には、言葉の通り、夕日を吸い込んだような眩い光を放つ狐の精霊が静かに佇んでいました。けれど、幼いミチコにはその姿は見えません。
「本当に? 狐さんになって、会いに来てくれるの?」
「ええ、本当よ。これは神様と、おばあちゃんとの秘密の約束」
おばあちゃんは優しくミチコの頭を撫でました。その手は少し震え、体温は驚くほど低くなっていました。
実は、おばあちゃんは知っていたのです。自分の心臓が、もうすぐ最後の手拍子を打とうとしていることを。そして、この「神様のお手伝い」という話が、幼い孫を傷つけないためのたった一度の嘘であることも。
けれど、その嘘は、ただの作り話ではありませんでした。
おばあちゃんの深い愛に導かれるように、本物の精霊がその場に現れ、彼女の最期を見守っていたのです。
「約束だよ、おばあちゃん」
ミチコがウサギを受け取った瞬間、おばあちゃんは満足そうに瞳を閉じました。まるで、柔らかな陽光に溶けていくような、静かな旅立ちでした。
数年後。
成長したミチコは、ふとした拍子に、あの日の「嘘」に気づきます。おばあちゃんが旅に出たのではなく、もう帰らぬ人となったのだという事実に。
けれど、不思議と悲しみはありませんでした。
独りぼっちで泣きそうな夜、あのウサギを抱きしめると、いつも背後から不思議な温もりを感じたからです。窓ガラスにふと映る、自分を包み込むような金色の光。
「おばあちゃんの嘘つき……」
ミチコは微笑んで、ウサギをぎゅっと抱きしめました。
おばあちゃんがついてくれた嘘は、形を変えて、永遠に彼女を守る**「本当の魔法」**になったのでした。

みかんさん、宜しくお願いします🙇⤵️
山中サトシさん、ありがとうございますm(_ _)m
すいちゃんさん、マガジン収録ありがとうございますm(_ _)m
柊紅葉さん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
ロクトさん、記事紹介ありがとうございますm(_ _)m
