月を拾ったねこ
迷子の夜を灯すもの
その夜、空にぽっかりと穴が開いたわけではありません。
ただ、あまりに風が強く吹いたので、お月さまがうっかり夜の枝に引っかかり、そのまま足元の小川へ落ちてしまったのです。
石畳の道を歩いていたトラ猫の「テト」は、川の向こうで金色の手まりが跳ねるのを見つけました。
「あれ~、あんなところに美味しそうな光が」
テトは背中の風呂敷をほどき、カゴを置いて、そっとその光を両手で掬い上げました。
それは驚くほど軽く、そして焼きたてのパンのように温かかったのです。
月を拾ったあとの小さな奇跡
街を照らすぬくもり:テトが月を掲げると、消えかかっていた街の灯籠や家々の窓に、柔らかな黄金色の輝きが戻っていきました。
桜の目覚め:月の光に触れた夜桜は、まるで春の朝が来たと勘違いしたかのように、いっそう鮮やかに色づきました。
見守る瞳:テトの澄んだ瞳には、自分が見つけた「宝物」への好奇心と、それを大切に守ろうとする優しさが映っています。
テトは少しの間だけ、この月を自分のカゴに入れて持ち帰ろうかと考えました。
けれど、ふと見上げると、夜空が寂しそうに暗い場所を残しています。
「これは、みんなのものだね」
テトは大きく背伸びをして、精一杯腕を伸ばしました。
小さな肉球から離れた光の玉は、ゆっくりと空へ昇っていき、再びいつもの場所で夜の街を照らし始めました。
今夜、あなたの窓から見える月がいつもより少しだけ温かく感じられるなら、それはきっと、どこかの猫が拾って温めてくれた月なのかもしれません。

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