狐火の灯る帰り道
深い藍色に染まった森の奥、村へと続く石畳の道は、夜の帳にすっぽりと包まれていました。
背負い籠に薬草を詰め込んだ少年は、手元の古い提灯だけを頼りに歩を進めています。けれど、今夜の森はいつもとどこか様子が違いました。足元を照らすのは、提灯の橙色の光だけではありません。暗がりのあちらこちらに、ゆらゆらと青白く浮かぶ「狐火」が灯っていたのです。
「迷わないように、連れて行ってくれるのかい?」
少年の問いかけに答えるように、一匹の白い狐がひょっこりと姿を現しました。その尾の先には、本物の火よりも温かな、黄金色の炎が宿っています。
白狐は決して吠えず、ただ少年の数歩先を軽やかに歩きます。石畳を叩く少年の足音と、時折パチリと弾ける狐火の音だけが、静かな森の旋律となって響いていました。
道の傍らに立つ古い石灯籠に明かりが灯る時、そこは現世(うつしよ)と隠り世(かくりよ)の境界線。
少年が心細さに足を止めそうになると、狐火はひときわ明るく舞い上がり、彼を優しく急かしました。
やがて森が開け、遠くに村の家の明かりが見えてくると、白狐はふと立ち止まりました。
少年が振り返り、「ありがとう」と告げる間もなく、狐火は夜風に溶けるように消え、白狐の姿もまた、深い茂みの向こうへと消えていきました。
提灯の火を吹き消した少年の手元には、いつの間にか一房の不思議な金色の木の実が。それは、無事に家路を辿り着いた者だけが受け取れる、森からの小さなお裾分けだったのかもしれません。

#3つのお題に空想のひらめきを
#片桐みかんさん企画
みかんさん、宜しくお願いします🙇⤵️
無愛想さん、記事紹介ありがとうございましたm(_ _)m
