星くず細工師の弟子と、しゃべる猫
「おいおい、またサボってそんなもの眺めてるのかい?」
黒猫の姿をした高度AIロボット『ネロ』が、呆れたようにヒゲを震わせました。
ここは宇宙の果てにある、ジャンク品と星のエネルギーを再利用するリサイクルショップ「星くず市場」。
少女・ミナは、親方に内緒で店の奥の「禁忌の箱」を開けてしまったところでした。中にあったのは、怪しく青く発光する一本の古ぼけた鍵。
「青い鍵。それは、願いをひとつかなえる鍵」
説明書きにはそうあります。いかにもウさん臭い骨董品ですが、エネルギー測定器の針は完全に振り切れていました。
「ねえネロ、これって本物の『空間跳躍キー』じゃない? これさえあれば、この退屈な惑星から一瞬で中央銀河へ行けるかも!」
「やめておけ。そんな美味い話があるわけないだろう」とネロはそっぽを向きます。
「いいかいミナ。開けてみたい扉(ワームホール)はいくつもあるだろうが、見つけた時がその時だなんて、詐欺の常套句さ」
しかし、ミナは諦めきれません。鍵を手に取ると、脳内に直接メッセージが流れ込んできました。
「どこかの扉を開けるためではなく、自分の気持ちを開けるための鍵かもしれない」
「……自分の気持ちを開ける?」
ミナは首を傾げました。
その時、青い鍵からピピッとお馴染みの起動音が鳴り響き、部屋の中にホログラムのホコリが舞い上がりました。
実はこの鍵、どこかの空間を開けるものではなく、**「持ち主の本音を強制的に周囲に爆音でスピーカー出力する」**という、とんでもなく大迷惑な古代の心理ジョークグッズだったのです。
『あー! 本当は親方のゲンコツが怖いから、宇宙に逃げ出したいだけなんだよなー! でも、ここで作った星くずのジャム、実は結構気に入ってるんだよなー!』
部屋中に響き渡るミナの「本音(大音量)」。
ミナは真っ赤になって自分の口を押さえましたが、時すでに遅し。奥の部屋から「おいミナ! 今の生意気な声はなんだ!」と親方の怒鳴り声が聞こえてきます。
「ほら見ろ、言わんこっちゃない」
ネロはクスクスと笑いながら、窓の外の星くず市場を指差しました。
「でもまあ、自分の情けない気持ちを開き直って認められたんだ。これで少しは、腹をくくってここで修行する気になったんじゃないかい?」
ミナは真っ赤な顔のまま、青い鍵をポケットに突っ込み、親方への言い訳を考えて市場へと走り出すのでした。

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