神様の留守番電話
天界のデスクは、相変わらず散らかっている。
目の前のモニターには、私がかつて手慰みに造った小さな惑星が映っていた。
正直に言えば、あそこはとっくに
「失敗作の楽園」だ。
水は濁り、空気は汚れ、せっかく用意した資源も奪い合いの種にされる。
整合性を重んじる他の神々からは「早く初期化(フォーマット)しろ」と苦情が絶えないが、私はそのままにしている。
完璧すぎる幾何学模様より、予定調和を裏切る混沌の方が、見ていて飽きないからだ。
「さて、今は……『七回目の人類』か」
私は画面をズームした。
一回目は真面目すぎて自滅し、四回目は好戦的すぎて灰になった。
今回の七回目は、歴代の中でも群を抜いて「未練がましい」連中のようだ。滅びかけた星の片隅で、まだ何かを観測したり、壊れた機械を直したりしている。
ふと、デスクの端で小さなランプが点滅した。
惑星の丘に設置した、私への直通電話——通称「神さまの留守電」が反応している。
もちろん、出るつもりはない。
私が言葉を発してしまえば、それは「奇跡」という名の残酷な強制力になってしまう。だから私は、何千年も前に吹き込んだ無責任なメッセージを流し続ける。
『あとのことは、あなたたちの好きなように。』
それは突き放した言葉ではない。私からの最大のギフトだ。
デザインの意図なんて気にしなくていい。正解を求めて私を呼び出さなくていい。
モニターの中、七回目の人類の一人が受話器を置き、ふらりと散歩に出るのが見えた。
彼は空き缶を蹴り、道端のガラクタを眺め、設計図にはない足跡を刻んでいく。
「そう、それでいい」
私はコーヒーを啜り、次の「失敗」がどう花開くかを眺めることにした。
完璧な成功作よりも、愛すべき失敗作の方が、物語はいつだって美しいのだから。

片桐みかんさん、宜しくお願いします🙇⤵️
