秘密基地の約束
夕暮れが街をオレンジ色に染める少し前、僕らの世界はあの木の上に集約されていた。
釘を打つ手が震えた夏休み。
拾ってきた廃材と、誰かの家で余っていた古い梯子。
ガタガタと揺れるその場所は、大人たちから見ればただの「危ないゴミ山」だったかもしれないけれど、僕らにとってはどんな城よりも堅牢で、誇らしい**「秘密基地」**だった。
「いいか、ここでの話は、たとえ親に聞かれても絶対に内緒だぞ」
リーダー格のタカシが、真面目な顔で人差し指を立てる。僕とサトシは、神聖な儀式に臨む騎士のような心持ちで深く頷いた。
木の板に書かれた
「ひみつきち」の
文字。
入り口の看板に刻んだ
「入るべからず」
の警告。
それは、僕らが子供でいられる時間の境界線だった。
基地の中には、僕たちの「宝物」が詰まっていた。
誰にも見せていないお気に入りの漫画
近所の空き地で拾った、宇宙の石に似た滑らかな黒石
「みかん」と書かれた箱に隠した、秘密のお菓子
その日、僕たちは一つの大きな約束をした。
「大人になっても、この場所を忘れないこと。そして、もし道に迷ったら、またここで集まろう」
あれから、何十回もの夏が通り過ぎた。
木造の家並みはコンクリートのビルに姿を変え、あのアスファルトの匂いも、錆びた自転車の音も、記憶の隅へと追いやられてしまった。
ふと、仕事帰りの駅のホームで、どこからか金木犀の香りがした。
その瞬間、僕の脳裏に鮮やかに蘇ったのは、あのセピア色の光景だ。
ガタガタ揺れる木の板の感触。
友達と笑い合った、少し喉の奥が熱くなるようなあの感覚。
僕たちはもう、梯子を使わなくても高いところに手が届く大人になった。けれど、心の中には今も、あの「入るべからず」の看板が立っている。
あの日の約束は、場所を守ることじゃなかったんだ。
どんなに世界が変わっても、あの頃の「ワクワクする心」を捨てないこと。
僕はカバンを肩にかけ直し、少しだけ足取りを速める。
今夜は久しぶりに、あの頃の仲間に電話をしてみよう。
「まだ、あの基地の場所、覚えてるか?」と。

#3つのお題に空想のひらめきを
#秘密基地の約束
#片桐みかんさん企画
田端うつ郎さん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
みかんさん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
西野光照さん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
山中サトシさん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
ダンちゃんさん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
