おおかみと春の花
厳しい冬がようやくその白い尾をひきずって去り、山々に桃色の吐息が混じり始めた頃。
一匹の大きなおおかみが、谷間を見下ろす丘に立っていました。彼の毛並みは冬の名残でまだ少し硬く、その鋭い瞳は、長く孤独な季節を耐え抜いてきた証でもありました。
しかし、鼻先をかすめた風が、いつもとは違う「甘い記憶」を運んできました。
はじまりの香り
おおかみは、足元の変化に気づきます。
昨日までは霜に覆われていた地面から、小さな、けれど力強い命が顔を出していました。
黄色の花は、陽だまりの欠片のように。
紫の花は、夜明け前の空の色を映したように。
そして、頭上には淡い紅をさした桜が、静かに花弁をこぼしています。
「今年も、会えたな」
おおかみは低く、独り言をつぶやきました。彼にとって春の花は、ただの景色ではありません。それは、厳しい冬を生き延びた自分への、森からの無言の祝福でした。
舞い散る約束
風が吹くと、桜の花びらがおおかみの鼻先にふわりと舞い降りました。
彼は目を細め、その小さな温かさを感じ取ります。鋭い牙も、鋭い爪も、この繊細な春の訪れの前では、ただ静かにひれ伏すしかありません。
おおかみはゆっくりと腰を下ろし、夕日に染まる谷を眺め続けました。
春の花々が風に揺れる音を聞きながら、彼は思います。この美しさを守るために、自分はこの山で強くあり続けよう、と。
おおかみの背中には、数片の桜の花びらが、勲章のように優しく光っていました。
_春の吐息に包まれて
遠い山並み 霞む空
凍てつく夜は もう遠く
おおかみは静かに 目を閉じる
足元に咲く 名もなき花と 頬をなでる
花の雪 命が歌い 山が笑う
孤独な王の 心もほどける
さあ、新しい季節を 共に行こう

#3つのお題に空想のひらめきを
#おおかみと春の花
#片桐みかんさん企画
西野光照さん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
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山中サトシさん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
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