雲の上の待合室
空の最果て、天蓋の際に
「雲の上の待合室」があるという。
そこは、行き場を失った誓いや
喉の奥で凍えたままの言葉たちが
静かに羽を休める、記憶の聖域。
僕の薬指には、あの日君がくれた
少し不格好な「木の指輪」がひとつ。
歳月という名の呼吸を繰り返し
僕の体温を吸い込んでは
深く、透徹した琥珀色へと熟していく。
心の抽斗の、いちばん深い暗がりに
君が遺した「消えない手紙」を眠らせてある。
滲むことのないインクの跡は
今もなお、脈打つような鮮やかさで
頁をめくるたび、あの日の風が僕の頬を撫でる。
いつか僕が、あの高い待合室へ辿り着くとき
この指輪を、誇らしげに君に見せようと思う。
不揃いな木目が刻んだ、孤独と愛おしさの記録。
それを「手紙の続き」として語り合えるまで
僕はここで、君の温もりを編み続けている。

#片桐みかんさん企画
#3つのお題に空想のひらめきを 【第30回】
