連作詩:星を運ぶクジラの旅
Ⅰ. 紺碧の出帆
深い星の海の底
目覚めたクジラの背中に
真珠の光を孕んだ風船たちが結ばれる
ピンク、紫、黄金の、夢の色彩
ゆっくりと、ゆっくりと
浮遊草の糸が引き上げられる
紺碧の体にまたたく無数の星々
海を捨て、空という名の別の海へ
眼下には雲の絨毯
パステルに染まるお城をかすめ
三日月が微笑む高い空へと
僕らの旅が、今、始まる

Ⅱ. 雲の上のプレリュード「雲の住む音楽家」
風に流され、たどり着いたのは
真っ白な、ふかふかの五線譜
そこは「雲の住む音楽家」たちの都
空色のグランドピアノが響かせるのは
青空の透明さをそのまま溶かした音色
チェロが、バイオリンが、ハープが
雲の隙間をメロディで満たしていく
白い不思議な生き物たちも
ウサギも、ネコも、小鳥たちも
みんながタクトに合わせてステップを踏む
クジラの影が通り過ぎるとき
空はひとつの、大きな歌になる

Ⅲ. 虹色の揺りかご「虹色の温泉」
旅の途中で見下ろした
満開の桜に抱かれた、秘密の湯
空の虹がそのまま融けだしたような
七色にきらめく「虹色の温泉」
カピバラも、ネコも、ペンギンも
ユニコーンも、小さなドラゴンも
手ぬぐいを頭にのせて
「すべての疲れを、やさしく洗い流します」
立ち上る湯気は、七色の霧となって
空飛ぶクジラの傷を癒やす
温かな色彩に満たされて
誰もが穏やかな夢を見る場所

Ⅳ. 終わらない航海
音楽の余韻を羽織り
虹色の暖かさを胸に秘め
クジラはまた、夜の深淵へと進む
背中の風船は、夜空の星を反射して
小さな惑星のように明滅している
この空がある限り
美しい音色と、温かな光がある限り
星を運ぶクジラの旅は
どこまでも、どこまでも、終わらない
くろまるが生きていた頃に書いた作品です。
迷いましたが、挙げます。
みかんさん
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