夜を渡る舟
あなたの声は、銀の波紋に溶けて消えた。
私は独り、「夜を渡る舟」を漕ぎ出す。
行き先を失った櫂(かい)が、重い静寂をかき乱すたび、
記憶の断片が、星屑のように水底へ沈んでゆく。
霧の彼方に、幽(かす)かな震えが見える。
そこは「光を抱く森」。
かつて交わした約束が、淡い燐光となって樹々に宿り、
叶わなかった夢たちが、露となって梢を濡らす場所。
森の奥へ踏み入れば、懐かしい残り香が胸を刺す。
伸ばした指先を、光の粒は無情にすり抜け、
温かな幻影だけが、氷のように私の肌を撫でていった。
「ここで待てば、いつか――」
呟きは木霊(こだま)することなく、深淵に吸い込まれる。
そこに横たわるのは、手つかずの「千年の余白」。
あなたがいない未来という名の、
あまりに透き通った、残酷なまでの空白だ。
私はその余白の端に座り、消えゆく光を数えている。
千年という時間は、あなたを忘れるにはあまりに短く、
ただ独りで生きるには、永遠よりも、なお長い。
光を抱く森_

#🍊第37回 3つのお題に空想のひらめきを
🎈お題①:「夜を渡る舟」
🐾お題②:「光を抱く森」
⏳お題③:「千年の余白」
#お題 ④イラストから空想した世界を書いて下さい。

