Echoes of Creation
——創世の残響——
その瞬間まで、世界は「沈黙」という、重く、完璧なドレスを纏っていた。
零、そして一。
暗黒のヴェールが裂けたのではない。
静寂そのものが、内側から弾け飛んだのだ。
それは音であり、光であり、熱だった。
何よりも先に生まれたのは、万物を存在せしめるための「リズム」——鼓動(ハートビート)だ。
ドォォォォォォォォン……
空の最奥、最も眩い「起点」から、空間そのものを震わせる重低音(バス)が放たれる。
これが第一波。存在の宣言。
この重厚な一撃が、まだ形を持たぬ混沌を、天と地、水と光へと押し広げた。
天上の五線譜
音が光の速度を超え、空間に定着していく。
見よ。空には、光り輝く音符たちが、不可視の糸に紡がれ、巨大な円環を描いている。
あれは、後に「惑星」と呼ばれる、凍りついた音楽の欠片だ。
それらが軌道を周回するたび、ガラスをこするような、澄み切った高音が、宇宙の果てまで木霊する。
「——ミ、ソ、シ、レ、ファ——」
それは言葉を持たない、純粋な数学的調和。
銀河の渦はハープのアルペジオのように、流れ星はフルートのトレモロのように、瞬きながら、それぞれの旋律を刻んでいく。
宇宙は、それ自体が巨大なオルゴールとなったのだ。
結晶のシンフォニー
地に目を向ければ、水面はまだ熱を持った振動に波立っている。
岸辺にそびえる水晶の尖塔は、空から降り注ぐ天上の音楽を余すことなく受け止め、その身を青く発光させていた。
キィィィィン……
水晶たちは、受信した音を増幅させ、今度は地表へと放射する。
足元の岩が、水滴が、そして生まれたばかりの風が、その振動に呼応して、微かな、しかし確かな音を立て始める。
ザァァ……サラサラ……
それは、天上の完璧な音楽に対する、地上の、どこか不完全で、愛おしい「生命の胎動」の音だ。
光の柱が天と地を繋ぎ、すべての音が重なり合った時。
世界は、一つの完成された、永遠に終わることのないシンフォニーを奏で始めた。
私たちは今も、その音の中に生きている。
耳を澄ませば、心臓の鼓動の裏側に、あの始まりの日、宇宙を震撼させた壮大な旋律の残響が、確かに聴こえるはずだ。

#3つのお題に空想のひらめきを
#世界の始まりの音
#片桐みかんさん企画
みかんさん、マガジン収録して下さり感謝です(^人^)💞
西野光照さん、マガジン収録して下さりありがとうございます(^人^)💞
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