#言わぬが花
秘すれば花
言わぬが花と、人は言う
口を突いて出そうな言葉を
そっと飲み込み、胸の奥
白日のもとに晒された美しさは
やがて形を失っていくから
言葉にしないその余白に
私たちは、無限の情景を描く
秘するが花と、心に決める
すべてを明かさない覚悟
そっと隠した、胸の火
見せないからこそ、いとおしく
語らないからこそ、深く響く
秘められた蕾のなかにだけ
本当の、散らない花が咲いている
語り尽くせぬ沈黙のなかに
いちばん美しい花が、今も咲いている
沈黙の庭
全てを言葉にしなくていい。
私たちはいつからか、白黒をはっきりつけることや、心の中のすべてを言語化して差し出すことが「誠実さ」だと信じ込んでしまった。
けれど、本当の優しさや美しさは、語られなかった言葉の余白にこそ宿るのではないだろうか。
秘めるからこそ、美しい
「言わぬが花」という言葉がある。
文字通り、口に出さないからこそ、そこに風情や美しさが咲き誇るという意味だ。
満開の桜を前にして、「来年もまた一緒に見ようね」と言葉にするのも素敵だが、ふと見交わした視線のなかに、お互いの未来への願いをにじませる。その沈黙には、どんな言葉も追いつけないほどの濃密な約束が隠されている。
語りすぎる言葉は、時に現実を狭めてしまう。
語られない言葉は、相手の想像力の中で、無限のグラデーションとなって広がっていく。
人間の心は、デジタルな0か1かで割り切れるほど単純ではない。グラデーションのまま、曖昧なままにしておくことで、守られる関係や、傷つかずに済む繊細な感情が確かにある。
余白という名の思いやり
何でもオープンに話し合えることが「風通しの良い関係」と言われる現代。しかし、何でもかんでも土足で踏み込み、心の内をあけすけに晒し合うことが、本当の心地よさなのだろうか。
相手の失敗に気づいても、あえて気づかないふりをする。
自分の正論が相手を追い詰めると分かったとき、すっと言葉を飲み込む。
「言わぬが花」とは、我慢や諦めではない。
言葉は凶器にもなるし、薬にもなる。だからこそ、その刃をあえて鞘に収めたままにしておく静かな佇まいに、大人の気品が宿る。
言葉に溢れたこの世界で、私たちはもう少し、沈黙を愛してもいい。
語り尽くさないからこそ、私たちの心にはいつも、枯れることのない小さな花が咲き続けるのだから。

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