短編小説w「流れ星を見て吹き出すあたし」
「あ、流れ星だ」
あたしは思わず指さしたの。サークルの女友達二人も「ウソ!」と言ってあたしが指さした空の方を慌てて見たけど間に合わなかったみたい。
男の子三人組は「え?」と言って指さした方を見たみたいだけど、ピンとこなかったみたいで顔を見合わせている。
あたしは楽しくてちょっとウフフと笑ってしまった。
「楽しそう」
女友達の一人があたしを見ていったけど、ホントその通り。楽し「そう」じゃなくて楽しいからね。
夜店の列は奥まで行くと唐突に途切れて、その先にはフェンスが置いてある
「あ、ここまでか」
女友達が言った。
あたしはクルッと振り返って、今来た道を戻ろうと歩き出した。
「ちょっと待ってよお」
女友達があたしの名前を呼んだ。
早いな、と男の子の一人が言ったからか、女友達の一人が笑った。
「いつもそうだよね」
女友達が言って、あのコ、めっちゃ面白いから、と男の子の一人に言った。
「そうなんだ」
そうなんだも何もない、面白いのは別に意識しているわけじゃないし、周りが勝手いってるだけ。まあ自分でも変わってるとは思うけど、それはたぶん帰国子女だからかもね。
日本は楽すぎる。だからついついテンションも高くなりがちなんだよね。
お祭りに来て、女友達二人と歩いてたら男の子二人組に声をかけられて、これってナンパってヤツだよねってなってなんだかワクワク。
あたしたちは三人だったから、人数が合わないね、と思っていたら途中でもう一人が合流して、三対三になったんだよね。
夜店を見ながら歩いているうちに、何となく男女のカップルになって、それぞれが「ちょっとアレやってくる」なんて言いながら、別行動を始めて、気が付いたら三人バラバラになってた。
あたしの横には、少し華奢な男の子が並んで歩いていた。かっこいい顔なんだけど、ちょっとロボットみたい。日本人の顔ってまだ見分けがつきづらいんだよね。海外に比べたらちょっと単一的な感じ。あと、日本人はみんな華奢だよね。
「金魚すくいでもやってみる?」
あたしの横を歩いている男の子が言ったから、あたしは「OK、いいよ」って答えたの。
金魚すくいは小さいころやったことがある。なぜかあたしはたくさん捕れて、お店のおじさんが「金魚がいなくなっちゃうよ」って嘆いてた。
男の子は真っすぐな髪(直毛っていうのかな)をまあるく切りそろえて、今風のオシャレな髪型にしてたけど、真っすぐな髪って逆に超違和感。ウェーブがかかってたりクルクルってなってた方が自然な気がする。
男の子の髪がさらさらって風になびくのを見てたら、なんか急に可笑しくなってまたウフフフって笑っちゃったの。
「なんでいつも笑ってるの?」
男の子が不思議そうにでも面白がるように聞いたから、あたしは
「なんか面白いんだよね」
って答えておいた。だって理由らしい理由はないんだもん。
金魚すくいでは、あたしは0匹で男の子は1匹だった。得意だと思っていたけど、昔の話だね。男の子は「あげる」といって金魚の入った袋を差し出したんだけど、あたしは
「いらない」
っていったの。だっていらないし、帰りの荷物になるから。
男の子はうーんってちょっと困ったようにしてたけど、金魚すくいやってみる?って言ったのは男の子のほうだからね。
そのあと二人でかき氷を食べたりしながら、なんとなくコレってデート?なんて思っていたら、男の子が
「ちょっと静かなところに行こうよ」
って言ってきたんだよね。
「そうだね」ってあたしは答えたんだけど、静かなとこってどこって。
そしたら夜店が出てる参道から少し外れた、公園だったんだよね。
大きな公園ではなかったけど、何組かのカップルっぽい人たちが歩いてた。浴衣を着ているからお祭り帰りだね。
あたしたちはベンチに座ってふーっとちょっとため息をついた。
あたしは、また流れ星が見えないかなあ、と思って空ばかり見てたの。
「ちょっと変わってるよね」
男の子が言った。
どうやらあたしが変わってるって言いたいみたいだけど、海外では変わってるのが当たり前だからね。日本では、みんな同じようにあたしのことを変わってるって言うんだよね。
だからあたしは
「日本人の方が変わってるよお」
って言ったの。男の子は「そうかな」って言ったっきり静かになって、何かを考えてるようだった。
フッて気が付いたら、いつの間にかあたしの肩に腕が回されていたの。
あたしはそれがどういう意味かよくわかんなかったんだけど、まあいいかって思ってた。
そしたら、男の子があたしに顔を近づけてきたんだよね。あたしの肩に回した手が気持ち引き寄せるみたいに、力が入ってググっとね。
そして、男の子があたしにキスをしたの。
あたしは目を開けたまま、男の子の顔を見てたんだけど、男の子もあたしの顔を見てたみたい。ピンボケの中でしばらく目が合ってたんだよね。
男の子が唇を離してあたしの顔をみたとき、あたしはなぜかまたウフフフって笑っちゃったんだよね。
男の子はなんとなく気まずそうな顔をしたあと、
「好きじゃないでしょ」
って言ったんだよね。あたしはたまらずハハハハって笑っちゃったんだけど、仕方ないよね。
やっぱりキスはドキドキしないとその気にならないし、それはあたしが悪いんじゃないよね。
男の子とは、駅の近くで別れたけど、「じゃあ、またね」って言ったらなんか困ったような顔してた。
男の子が手に金魚を持っているのを見たら、あたしは吹き出しそうになってすぐに後ろを向いて顔を空に向けてしまったの。
そしたら空に一筋の光がスーッと通ったんだよね。
「あ、流れ星だ」
あたしが叫んだら、男の子が「あ、ああ」ってよくわからない返事をするから、あたしは今度は本当に吹き出しちゃったんだよね。
おわり
※)セミが鳴いてていい感じの夏ですが、暑いですね。スキ/フォローありがとうございます。励みになります。
