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「感想:【パープル・セイヴィア】を読んでみた」の巻

そういうわけで、今回はモスキート エリさんの「パープル・セイヴィア」という作品を読み終わったので、感想を書いてみます。

いつものように、作品の感想自体は私個人が勝手に感じたことなので、必ずしも作者の意図に沿ったものではないであろうことを最初にお断りしておきます。


「パープル・セイヴィア」は、連載という形で12章で完結となっています。

創作大賞2025に応募しているということで、たまたま読み始めたらグイグイと惹きこまれてしまった、非常に吸引力のある作品です。

恋愛小説という分類になっているようですが、人間ドラマとしての一面や医療ドキュメントのような側面も感じる多面的な魅力をもった作品といえましょう。

医療ドキュメントと書きましたが、作者はおそらく実際に医療の現場に携わっているか、あるいはその経験がある方なのではと想像します。

それくらい、医療現場での描写は非常にリアルで、時には専門用語を使ってその緊迫したシーンやその内部事情までが描かれます。

さて、このように書いてしまいましたが、この作品はあくまで恋愛小説ということで、その分類は決して間違ってはいないだろうと思うわけです。

物語の主人公は看護師の千咲。

彼女が「私」としてその心の移ろいを語っていくわけですが、その内面が痛みや悲しみ、悩みなどを含んだ、なんというか人間なりの矛盾に満ちていて非常にリアルなんですね。

物語は、恋愛と仕事という二つの主軸を行ったり来たりしながら進んでいきます。

「私」がなぜ恋愛に惹かれ、仕事に惹かれていくのか、また同時に依存してくのかが心の中を深く掘り下げてエピソードとともに丁寧に語られていきます。

この作品が特別なのは、主人公である「私」の仕事が医療に関わる看護師であるということが大きな要素になっているから、と思うんですね。

文字通り人の痛み、苦しみと向き合う仕事であり、場合によっては人の死とも向き合わざるを得ないわけです。普通の仕事を考えると、これはとても特別だといえます。

そんな看護師の日常が「私」を通して、とてもリアルに描かれるわけですが、責務の大きさと実労働の大変さ、家庭など私生活との折り合い、事情などで静かに疲弊していくにも関わらず、そこに喜びも感じる日常がいつの間にか”依存”を生んでいくという矛盾に、強烈に”人間”を感じてしまうわけです。

ここは仕事、ここは恋愛という風に単純に分けられないのは、当然ですが全てが同時進行で、そこに人間が人間たる本能が確かに存在しているからですが、その日常に徐々に恋愛の空気が漂ってくるんですね。

人間に矛盾があって当たり前。読者は、その矛盾に共感せざるを得ないんですが、仕事で足りないところを恋愛で、恋愛で足りないところを仕事で、と無自覚的であってもそんなところに、なんともいえない脆さや弱さを感じてしまいます。

しかし、これは人間が本来持っている脆さなのでは、と多くの”大人”は気が付いていて、これ責められないんですね。人間そんなに強くないですから。

この時点で、この小説が非常に”大人”な物語であると気が付くわけです。

人生において恋愛はただのホレタハレタではないことを多くの”大人”は経験的に知っています。

そこには生活があり、事情があり家族があり命があり、そして死があります。「ずっと一緒にいようね」と言った同じ口が「別れよう」と言ってしまう時、そこには様々な人間の矛盾が存在するんですね。

「あなたを愛しています、一週間だけ」

と言う人があまりいないように、その時はそれが永遠だと思っています。

「もう誰も好きにならない」

こう言ってその後誰も好きにならなかった人はむしろレアです。

そこには、いつの間にか”好きになったけど別れた人”のリストができてしまいます。

ちょっとスレた大人は「人間なんてそんなもんさ」などと言ってしまいますが、やはり「この人こそ運命の人」と本気で思うメンタルのほうが人生が有意義なのでは、と多くの人はどこかで期待していると思うんですね。

その意味で、この作品は主人公である千咲の成長の物語であり、人間の矛盾と向き合う物語であり、ある意味で悩み苦しみ傷付いた自分からの再生の物語でもあるわけです。

さて、いつものように勝手なことを書いていますが、全ては私個人が感じた妄想のようなものです。

物語は、私が書いたような一面的なものではなく、恋愛風味の人間ドラマとしても読みごたえのあるものです。

また、文章、文体ともとても色彩豊かに、あるいは香り豊かに「私」の心の内を表現しています。

私は、孤独が好きだ。
 そして、人が、好きだ。

「パープル・セイヴィア」より

この言葉はある意味で矛盾していますが、人間としては決して矛盾はしていないのです。


最後に、

作品の冒頭ででてきた「シーシャ」が何かわからず、主人公は何か悪い遊びでもしているのかとネットで調べたのは、ここだけの秘密です。

なるほど、水タバコね。

モスキート エリさん、素敵な作品をありがとうございました。


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