ぶりだいこん
冬の畑は日中でもキンとする。
たくさん着込んで防寒できても長靴の底から伝わってくる凍っていた地面の冷たさを足裏が拾って体温がどんどん奪われていく感じ。その痛いほどの寒さに耐えれば耐えるほど冬の野菜はおいしさを増してゆく。大根もそう。
午前中は土がまだ凍っているから午後から収穫に行くことにしている。
冬の畑は空気がピンと澄んでいて、すごく静かだから黙々と収穫していると世界に自分以外誰もいないんじゃないかと思う時がある。
大根を抜くときに掴んだ茎が折れる音も、植わってる大根の周りの土をほぐすために前後左右にゆすったときの葉が擦れる音も、ズブズブと土から引きはがされる音もよく聞こえる気がする。
大根を抜くときは全部の葉を掴むと周りの弱い葉だけ実からちぎれてしまってうまく抜けないから、周りのペタッと倒れた葉っぱは掴まないようにして芯のまっすぐな葉だけを掴んで抜く。
うまく大根が抜けたらペタッと倒れた周りの葉をきれいに取って、その葉で大根についた泥を少しきれいに拭いてやる。
たまに連れて帰ろうか悩む、今にも叫んで走りだしそうなマンドレイクみたいな大根がいる。気が済むまで写真を撮ったら畑の見張り役に任命して帰ろ。
帰ったら泥が固まる前にできるだけ早く水洗いする。
出荷用に準備する大根は水を流しながらブラシで泥を落としてから大きいプールに泳がせておく。プールの中で山盛りになった大根を軍手をした手で1本1本磨いていく。
真冬のこの作業は心臓が痛くなる冷たさだ。
洗い終わった大根はすのこの上に倒れないように山積みにして、夜のうちに凍らないようにお布団をかけておく。
翌日になったら1本ずつ重さを量ってS~4Lのサイズに分ける。
きれいにパッキングして、大根が割れないように出荷先まで運んだら大根の一連の業務が終了。
さて、ハネダシの大根を何本か家に持って帰ろう。
家の冷蔵庫には水煮にしてある大根が眠ってるから、今日持って帰るのはサラダにしようかな。
帰り道、馴染みの魚屋に寄って帰る。
ぶっきらぼうなあんちゃんも職人気質のおっちゃんも
「いいの入ってるよー!」って呼び止めてくれるあの感じ、好きだな。
あんちゃんたちの推しとは違うかもしれないけど、家で水煮の大根が待ってるから今日は鰤一択。
ところで水煮の大根をストックしておくととても便利。
厚めの輪切りにしたものを皮をむいて面取りして、米のとぎ汁でコトコト優しく煮る。落し蓋も忘れずに。
櫛が通るまで柔らかくなったら落し蓋の上からこれまた優しく水道から水を流し続ける。
ちょっと冷たい手で触ったときに少し温いなと感じるくらいになったら、ひとつずつ手で洗って水を張った容器に移し冷蔵庫に入れておく。
ここまでやっておくといつでも煮物を作れる。一週間くらいもつかな。
水洗いしているときに真ん中がへこんでいる大根だったらラッキーだ。
それは筋が柔らかくて味がよくしみる大根。
よし、じゃ、鰤大根を作ろうか。
鰤のアラは塩で締めた後に湯引きして余分な脂や臭みを取り除いて
冷水で鱗や汚れを洗い落としたら、水煮しておいた大根 水 酒 昆布とお鍋に入れてコトコト煮る。灰汁を取るのを忘れずに。
グラニュー糖とハチミツを加えて甘さを先に決めてしまおう。
甘みを含んだところで醤油と生姜のしぼり汁を加えて、煮詰まってきたら鍋を傾けて煮汁をおたまで掬いかけながら更にコックリ煮詰めていく。
大根を傷つけないように、鰤を焦がさないように様子を見ながらお世話する。湯気の香りが濃くなってきたら火を止めて、味が染み込むように落し蓋をして少し休んでもらおう。
白髪ねぎとゆずの皮も用意して、温めた器に盛り付けたら完成。
大根も鰤も傷つけずに取り分けられそうな大きめな塗りのスプーンを取り分け用に使おう。
明日はおでんにしようかな、、、うーん、肉みそがけも捨てがたいな。
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