調べ物🔎指標生物はどうやって選ばれる?
川の健康診断「指標生物」について
「この川はきれいだね」
そう私たちが口にする時、その基準はどこにあるのでしょうか。
実は、川に住む小さないきものたちが、その答えを教えてくれます。それが「指標生物」です。
環境省HP
https://water-pub.env.go.jp/water-pub/mizu-site/mizu/suisei/about/way/text1a.html
今回、水質判定に使われる指標生物のリストを見ながら、ふとした疑問が湧きました。
「そもそも、どうやってこの生き物たちは選ばれたのか?」
「環境や彼らの生態が変われば、階級(ランク)が変わることはあるのか?」
今回は、そんな疑問を深掘りしてみます。
1. 指標生物はどうやって決まるのか?
環境省や各自治体が水質判定に使う「指標生物」は、決してランダムに選ばれているわけではありません。そこには明確な「選抜基準」があります。
広く、分かりやすく、動かない
指標生物に選ばれるための主な条件は以下の3点です。
①分布が広いこと
日本全国どこにでもいて、比較がしやすいこと。
②見分けがつきやすいこと
専門家でなくても、特徴を捉えれば判別できること。
③移動能力が低いこと
魚のように自由に泳ぎ回るのではなく、その場所に定着していること(その場所の長期的な環境を反映するため)。
例えば、サワガニやカワゲラは「きれいな水(階級I)」の代表格ですが、彼らはその場所の酸素量や水温に非常に敏感です。
一方で、サカマキガイやエラミミズは「大変きたない水(階級IV)」でも生き延びる強さを持っています。
このように、「その環境でしか生きられない(または、過酷な環境でも生きられる)」という個性が、指標としての信頼性につながっています。
2. 環境や生態の変化で「階級」が変わることはあるのか?
ここが一番気になるポイントでした。
結論から言うと、「生き物自体の性質が変わってランク移動する」というよりは、「調査手法のアップデートによって分類が見直される」というケースがありました。
生態の研究による見直し
かつては「この種はきれいな水の指標だ」と思われていたものが、研究が進むにつれて「実は汚れた水にも耐性がある亜種が存在した」と判明することがあります。
その場合、指標生物のリストから外れたり、判定基準が細分化されたりします。
環境変化への適応は?
生き物が短期間で「汚い水でも平気な体」に進化して、判定の階級が変わることはまずありません。しかし、地球温暖化による水温上昇は大きな影響を与えています。
冷たくてきれいな水を好む「階級I」の生物(カゲロウなど)が、水質はきれいなのに水温が上がったせいで住めなくなり、代わりに少し温かい水を好む「階級II」の生物が増えるといった現象です。
これは「水質」の判定を難しくさせる要因の一つとなっています。
3. リストを眺めて気づく「多様性」
今回参照したリストを見ると、階級は以下の4つに分かれています。
階級I(きれいな水)
サワガニ、ヘビトンボ、カワゲラなど
階級II(少しきたない水)
コガタシマトビケラ、ヒラタドロムシなど
階級III(きたない水)
ミズカマキリ、タイコウチなど
階級IV(大変きたない水)
サカマキガイ、エラミミズなど
面白いと感じたのは、私たちが「かっこいい」「知っている」と思う有名な水生昆虫だけでなく、名前も知らない、地味な生物までもが、環境を測るための大切な「物差し」として機能していることです。
終わりに
指標生物を調べることは、単に水の汚れを知ることではありません。その場所にどんな命が根付いているのか、過去から現在までの歴史、いわば「履歴書」を読んでいるようなものです。
もし川に行く機会があれば、石の裏をそっと覗いてみてください。そこにいる小さないきものが、その川の「今」を懸命に伝えてくれているはずです。
