コラム76 本当に外科医はワークライフバランスが悪いのか?
最近…というかここ数年、大きな学会に行くと絶対といっていいほどに「若手医師のセッション」や「ワークライフバランス」が取り上げられているのですが、これはまあ納得できるな…というものから、全くもって的外れもいいところと思うものまで様々です。
そもそも「外科医はワークライフバランスが悪い」という前提であることがほとんどだし。
本当にそうでしょうか?
1. ワークライフバランスの最大の誤解

眼科、皮膚科、精神科…
若手医師(研修医)の調査では、ワークライフバランスが充実していそうな科を聞くと、「でしょうね」というような科が並んでいます。
バ〇じゃない?(口が悪い)
それ、自分が見て「楽(らく)そうだなー」って思った科を選んでるだけでしょ?
(実際には大学とかで、このような科で深く研究、長時間診療されている医師・研究者もたくさんいらっしゃいます)
僕が学生だった頃も同じようなアンケートありましたよ。
「QOL(Quolity of Life: 生活の質)の高そうな科はどこでしょう?」という名目で。
結果は全く同じ。
実にくだらないアンケートです。
なんかちょっとこじゃれた感じに、QOLが~とか、ワークライフバランスが~とか言わずに、「楽そうと思う科はどこでしょう?」って聞けばいいのに。
こういう、人生を楽(らく)であればあるほどいいと考えているハッピーな方たちが多いのを見ると、実に悲しくなる。
こういう人間は、ワーク(仕事)で楽(らく)して稼いで、ライフ(生活)をエンジョイすることがワークライフバランスだと思っていらっしゃる。
違うから。
前提として、人生は楽しむものであって、楽(らく)をしようとして過ごすものではない。
同じ漢字だけど、意味は全然違います。
ワークライフバランスというのは、ワーク(仕事)も楽しみ、ライフ(生活)も同様に充実させること。
つまり、仕事の充実なくして、生活の充実なし。
これとても大事。
楽(らく)そうだから…という理由で科を選んだら、あとで後悔しますよ!!
2. ワークライフバランスは年齢で変化する!
大学にいると若手の医者や学生さん達とお話する機会が非常に多いのですが、若い人であればあるほど、まだ人生経験が少ないですから、ワークライフバランスの将来像を誤解しています。

たいてい皆、「若いうちはバリバリ働きたい!でも、家庭を持って子どもとかできたら、家庭を大事にしていきたい」って言うんです。
そういう人たちの中でのイメージはこんな感じ。
年を取ればとるほどワークの割合を減らし、ライフを充実させたい。
でもね、実はそうでもないんです。人生って長いし、子どもなんてあっという間に大きくなって自立するんです。

結婚して子どもができた場合。そして、親の介護などが入った場合。
特に子どもが小学校に入学するまでは極めて家庭の比重が大きくなります。とてもタイヘン。そんな時に「きちんと支えてくれる職場・同僚」というのは超重要なのです。
しかし!!
小児外科という小児を専門にしている立場から言わせていただきますと、正直なところ、子どもが小学校高学年以上になると一気に手がかからなくなります。
もういっぱしの一人の人間ですからね。
最近晩婚化が進んでいるとはいえ、これは意外と早く来ます。
そう。
人生後半になって、家庭を大事にするぜー!って思ったところで、子どもはもうそんなにベタベタしてほしいわけじゃない…なんてことになるのです(悲)。
そうなった時に、「楽だからと思ってこの科を選んだけど、ライフワークとしては考えてなかった」とか「もっと興味があることすればよかった…」とか思っても後の祭りです。
せっかく頭が良くて、勉強ができて、最難関の医学部に通って医者になったのに、宝の持ち腐れ。
つまり僕が言いたいのは
若い時に、「後々家庭や趣味を大事にしたいときに、忙しくて無理かもしれない」なんていう漠然とした不安だけで、自分の本当にしたいことから目をそむけたり、諦めてしまったりしてもなーんにもいいことないですよってことです。
3. 外科医って本当にワークライフバランス悪いかな?
ぶっちゃけ、ワークライフバランスがきちんととれるかどうかって、科で決まることじゃないでしょ。
同じ科でも、ギスギスしてるとこともあれば、和気あいあいと助け合ってるところもある。
同じ職種の会社でも、ホワイトな職場でやっているところもあれば、ブラックな職場のところもあるように。
結局は職場の雰囲気(伝統)とか、上司で決まることの方が多いんだから。
この科は好きだけど、この職場(上司)は…って迷うんなら、同じ科の他の職場を探せばいいだけの話です。
以上を踏まえて、
今日の本題の「外科医って本当にワークライフバランスが悪いか?」という話です。
僕は外科医だから全力で外科医の擁護をさせていただきますが、
外科医は基本的にチームワークで働く生き物です。

手術はいつも複数人。手術中で全く手が離せない時に、他の医師がサポートしてくれるのは当たり前。
他の科と比べても、やっぱり「仲間意識強いなー」と感じます。

外科医やっていると、緊急手術でよその病院へのバイト行けなくなって他の先生にお願いする…なんてことはあるあるです。
お互い様なので、みんなたいてい気軽に引き受けてくれたり、後で調整してくれたりする。
この互助会的なつながりの強さは、「ちょっと子どもが熱出した」という突発的なアクシデントから、「(親の介護とかあって)しばらく当直できません…」といった長期的なものまで、チームで支えよう!という意識になってしみ込んでいます。
少なくとも僕は外科医をしていて内部で感じる限りは、ライフを大事にしないといけない時期の医師が(他の科より)めっちゃ苦労している…とは思いません。
4. 仕事の充実なくして、生活の充実なし!
すごく根本的な話をしますが、医者になるって大変です。
偏差値高いです。
勉強をすごく頑張らないといけません。
大学も6年も通う。
そこまでして頑張ってなる医者なのに、なんで一生の科を選ぶというとても大事な場面になって「楽(らく)そう」なんて理由で選ぶのか。
それだけの頭があれば、もっと楽して稼げる職業はあるでしょうに。
医学部って6年あって長すぎて、しかも勉強もきつくって…
しかもその間に高校生のメンタルから大人のメンタルへと変貌していく。
僕も経験ありますが、「もっと好きなことして生きていきたい」とか、「就職した後も仕事一筋になっちゃいそうで、面白くないんじゃないの…?」なんて思っちゃいがちなんです。
いやいやいや。
もう一度、医学部に入った理由を思い出しましょう。
多くの学生さんたちは、人を助けたいから医者を目指したはず。
つまり、それが「楽しそう。生きがいありそう」と思ったから、必死で勉強して医学部に入ったわけです。
じゃあそこで、「〇〇科は面白そうだけど、ワークライフバランス悪そうだからやめとくか…」なんて考えるのはもったいないの極み。
必死で勉強してきた、たった1度の人生を一気にドブに捨てるようなもんです。
自分が面白いと感じるところがあれば、一直線に向かえばいいんです。
僕は外科医(小児外科医)をしていますが、趣味を楽しんでないかと言われたら、絶対にそんなことはありません。
こんなnoteをひたすら書いているくらいですからね。
個人的には、忙しい仕事の合間でする趣味ほど楽しいものはないと思っています。
今日は長々とワークライフバランスについて書いてきましたが、結論としては
ワークライフバランスなんて、自分でコントロールしてなんぼです。
むしろ、ワークライフバランスをコントロールするのが人生の楽しみの1つとして捉えていただきたいですね。
(参考)
なし
